単に利益の繰延べだけでは隠ぺい・仮装に当たらないと裁決
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:02/05/2002  提供元:21C・TFフォーラム



 工事代金の一部を売上げに計上しないで売掛金の過入金として処理したことが、重加算税の賦課要件である隠ぺい・仮装にあたるか否かの判断が争われた審査請求事案で、国税不服審判所は単に利益が繰り延べられていることだけをもって隠ぺい・仮装に当たるとまでは言えないと判断、過少申告加算税相当額を超える部分を取り消す裁決を下した。

 この事案は、鋼製建具の製造販売・取付工事を営む請求人が、ある法人から受注した住宅棟工事の工事代金の一部を売上げに計上せず、過入金として処理した上で申告したことが発端になったもの。これに対して原処分庁が、過入金は全額まとめて売上げに計上すべきであるにもかかわらず、二期工事の収益、事後的に発生するクレーム処理に充当するために利益を留保していたことが明らかであり、その行為は隠ぺい・仮装にあたると認定して重加算税を賦課してきたため、請求人がその取消しを求めていたという事案だ。

 裁決は事実関係を調査した上で、請求人が争点となった過入金を工事を受注した法人からの売掛金の入金として経理し、翌事業年度には売上げに計上していると認定し、その事実認定の下に、利益が繰り延べられていることだけをもって、国税通則法68条1項が定める隠ぺい・仮装に当たるとまでは言えないと判断。また、請求人が工事原価を付け替えた処理については、その処理が争点となった事業年度に係るものではなく、この点については理由がないと斥けている。その結果、重加算税の賦課決定処分については、過少申告加算税を超える部分の金額を取り消すのが相当であるという裁決を下した。

(国税不服審判所、2000.11.15裁決)