理由提示の趣旨を充足する程度であれば不備はないと判断、棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:05/10/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 更正処分に係る通知書に記載された処分理由が要件を満たしたものか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、行政庁の不服申立ての抑制及びその便宜という理由提示の制度趣旨を充足する程度に記載すれば不備はないと判断、審査請求を斥けた。

 この事件は、原処分庁が審査請求人の相続税の申告に対して更正処分をしたことが発端になったもので、請求人が更正処分の理由の提示に不備があることを理由に、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり請求人側は、相続税の更正処分に係る通知書に記載された処分理由には、課税価格に加算される他の相続人らの相続時精算課税適用財産及び暦年課税分の贈与財産の合計額が記載されているものの、その明細の記載がないことから処分の基礎となる具体的な事実を知りえず、不服申立ての便宜を図った行政手続法14条が定める理由提示の趣旨に反するという主張を展開したわけだ。

 しかし裁決は、贈与財産それぞれの合計額が記載され、贈与財産の合計額が分かれば課税価格の合計額の算出ができるから、相続税額を算出した過程を示したものであると認定。また、相続時精算課税適用財産及び暦年課税分の贈与財産の価額を課税価格の合計額に加算する際には、他の共同相続人等の申告書の記載又は更正処分の内容等を基に相続税額の計算をするのであるから、課税庁の恣意が入り込む余地は乏しく、合計額のみの記載であっても恣意抑制という見地から欠けるところはないとも指摘した。

 さらに、相続時精算課税適用財産及び暦年課税分の贈与財産それぞれの合計額が記載されていれば、納税者は課税価格の合計額を算出することが可能であり、記載された合計額と納税者が認識している合計額を比較すれば不服申立ての要否を判断することが可能であるため、不服申立ての便宜という見地からも欠けるところはないと判断した。その結果、理由提示の趣旨目的を充足する程度に処分の理由が具体的に明示されており、違法性はないとして審査請求を棄却している。

(国税不服審判所15.09.28裁決)