収支内訳書の虚偽記載のみでは隠ぺい仮装は認められないと判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:06/21/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 消費税等の「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」たものであるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、収支内訳書の虚偽記載のみだけをもって隠ぺい仮装があったとは認められないと判断して、重加算税の賦課決定処分を取り消した。

 この事件は、審査請求人が所得税の修正申告並びに消費税及び地方消費税の期限後申告をしたところ、原処分庁が正当な売上金額を把握できたにもかかわらず、恣意的に操作して算出した売上金額により所得税の収支内訳書を作成したことが重加算税の賦課要件を満たしていると判断、重加算税の賦課決定処分をしてきたことが発端になったもの。そこで請求人側が隠ぺい又は仮装に当たらないと反論、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、請求人が過少申告の意図に基づき、
1)得意先に対する売上金額を記載したメモの一部を破棄したこと、
2)所得税額を試算した際のメモと同様の原処分に係る各年分のメモを破棄したこと、
3)正確な収入金額等を容易に確認できたにもかかわらず、収支内訳書に根拠のない額を記載したこと、
という一連の行為は、当初から所得等を過少に申告する意図であったことを外部からも伺い得る特段の行動に当たり、重加算税の賦課要件を充足する旨主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。

 しかし裁決は、請求人に過少申告の意図があったことは認められるものの、
1)のメモについては売上金が全て振り込まれ、しかもその入金のあった預金口座の通帳は保存されていたこと等から、メモ書を保存する必要がなくなったから廃棄した可能性が十分に考えられること、
2)のメモについては、そのようなメモを作成していた事実が認められないこと、さらに
3)については、収支内訳書に根拠のない額を記載する行為は過少申告行為そのものであることから、当初から所得等を過少に申告する意図であったことを外部からも伺いう得る特段の行動には当たらず、重加算税の賦課要件を充足しないと判断、重加算税の賦課決定処分を取り消す裁決を言い渡している。

(2016.07.01国税不服審判所裁決)