所得税の還付後に行った更正処分に、信義則違反はないと判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/12/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 所得税が一旦還付された後に更正処分をすることが、信義誠実の原則に反するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、税務官庁が申告書の作成を指導した事実を確認できないことから、税務官庁が信頼の対象となる公的見解を表示したとは認められず、信義則を適用する余地はないと判断して、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人(会社員)の所得税の確定申告を受け、原処分庁が所得税を一旦還付した後に更正処分をしてきたのが発端になったもの。つまり、原処分庁が還付後、給与所得の一部に申告漏れ、扶養控除の適用誤りを把握して更正処分等をしてきたため、既に申告書記載の「還付される税金」と同額を還付したのは、申告書の記載内容が適正であるとの公的見解を示したものであるから、更正処分により新たに納付すべきことになった税額のうち還付金に係る部分は信義則違反に該当すると主張して、一部取消しを求めた事案である。

 しかし裁決は、申告書は請求人の妻がパンフレットを見ながら作成し、郵送で提出されていること及び税務官庁が申告書の作成を指導した事実が確認できず、申告書の作成についても税務官庁が請求人に信頼の対象となる公的見解を表示したとは認められないと指摘。また原処分庁は、源泉徴収税額等の還付(所法138(1))及び確定申告による還付(所令267(4))に従って還付金を還付し、国税収納金整理資金に関する法律の規定に基づき国税還付金振込通知書を送付したに過ぎないのであるから、税務官庁が申告書の記載内容は適正であるとの公的見解を表示したとは認められないとも指摘。

 結局、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお更正処分に係る課税を免れしめてまで請求人の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情もないため、信義則を適用する余地はないと判断して審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2013.11.28裁決)