通則法74条の9が定める調査の意義を裁決が明確化
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/11/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 当初調査に追加して行われた年分の調査の手続等に処分を取り消すべき違法事由があったか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、国税通則法74条の9が定める調査は税目と課税期間によって特定される納税義務に係る調査を一の調査とみるべきであると解釈した上で、調査手続に違法な点はないと判断、納税者側の主張を斥けた。

 この事件は、室内装飾業を営む審査請求人に対し、原処分庁が事業所得の金額を推計して更正処分等をしたことが発端になったもので、請求人が調査手続の違法を理由に、原処分の全部取消しを求めて審査請求した事案である。

 具体的には、平成24年中に開始した21~23年分の所得税調査(当初調査)に、24年分の調査も追加したことから争いになったものだが、原処分庁は24年分の調査は当初調査の対象年分に追加したものであり、25年1月以前から引き続いて行われている調査に該当するため、国税通則法74条の9の適用はないと主張。これに対して請求人は、24年分の調査は改正後の国税通則法に則った通知をせずに行われており、手続要件を満たしていないため違法であると反論した。

 裁決はまず、税務調査は納税義務者の税目と課税期間によって特定される納税義務に関してされるものであり、その納税義務に係る調査を一の調査とみるべきであるという解釈を示した上で、24年分の調査は独立した一の調査となり、25年以前から行われている調査には該当せず、国税通則法74条の9第1項の適用があると認定。一方、調査担当職員は、調査の対象税目・期間に加え、調査の開始時期・場所・目的及び対象となる帳簿書類を請求人に通知していると認められ、24年分の調査を行う旨の通知しか行われていないとはいえないと認定。

 結局、24年分の調査は国税通則法74条の9第1項が定める事前通知の適用があるものの、同条同項に沿った事前通知が行われており、調査手続に違法とすべき点はないと判断、請求人の主張を斥けた。ただ、原処分庁の認定額が審判所の認定額を上回っている部分があったため、結果的には一部取消しという裁決内容になった。