解散に伴う残余財産の配分とは第三者に利益を与える処分と判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:06/23/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 滞納会社が唯一の株主に支払った剰余金の配当が国税徴収法39条の「第三者に利益を与える処分」に当たるか否かの判断が争われた事件で東京高裁(林道晴裁判長)は、実質的に解散に伴う残余財産の配分に類する行為は、第三者に利益を与える処分に係る該当性の判断において重要な事情になると指摘して原審の判断を支持、納税者側の控訴を棄却した

 この事件は、滞納会社の唯一の株主が、滞納会社から188億円余の剰余金の配当を受けたことが発端になったもの。これに対して東京国税局が、配当は国税徴収法39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)が定める「第三者に利益を与える処分」に該当すると判断、納付限度額を151億円余とする滞納会社の滞納国税に係る第二次納税義務の告知処分をしてきたため、控訴人が告知処分は違法であるとして、その取消しを求めて提訴したわけだ。しかし、東京地裁が請求を棄却したことから、判決内容を不服とした納税者側が控訴、再度、取消しを求めて争われてきた事案である。

 控訴人は控訴審で、1)滞納会社が受け取っていた係争売上金額は正当な業務の対価(報酬)であり、2)滞納会社の売上げとして計上することは合理性を欠くとした原判決は事実認定を誤っている、さらに3)配当が実質的に解散に伴う残余財産の配分に類する行為と認定したのは租税法律主義に抵触する類推解釈である、と補充主張を展開した。

 しかし判決は、徴収法34条と39条は別個に第二次納税義務の要件を定めたもので、相互に排他的に適用されるものではないから、前者の要件事実や密接に関連する重要な事実を後者で斟酌しても、徴収法34条を類推適用するものではないと指摘した。

 その上で、第三者に利益を与える処分とは滞納者の積極財産を減少させて利益を与える処分をいい、その利益が株式に係る配当の場合は、滞納会社の株主に異常な利益を与え、それが必要かつ合理的な理由に基づくものではないことを要すると解釈した。結局、滞納会社の資産の大部分を支払うような配当は、正常に営業を継続する法人が実施するとは考えにくく、実質的に解散に伴う残余財産の配分に類する行為であるという事実や評価は、第三者に利益を与える処分に該当するか否かの重要な事情になると判断して、控訴を斥けている。

(2014.11.25東京高裁判決、平成26年(行コ)第288号)