未調査のまま、収集済みの資料を基礎にした課税処分も妥当
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:12/06/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 法人税の更正処分及び源泉所得税の納税告知処分が調査手続きを欠く違法なものか否かが争われた事件で国税不服審判所は、原処分は適法な調査手続きに基づいて行われており、違法性は認められないと判断して審査請求を棄却した。

 この事件は、飲食店を営む審査請求人の法人税及び源泉所得税に対して、原処分庁が「法人税の当初更正処分において請求人の関連法人に帰属するとした収益及び費用は請求人に帰属する」として法人税の再更正処分及び従業員給与等に係る源泉所得税の納税告知処分等を行ったのが発端となった。

 そこで請求人が、法人税の再更正処分及び源泉所得税の納税告知処分等は調査をせずにされたものであり、手続きに違法があると主張して全部取消しを求めた事案である。請求人は、原処分庁が査察調査だけで改めて調査を行わなかった点を強調、未調査のままの各処分は適正な手続きを欠いており、一度減額したものに対して再度増額の処分をすることは権利の濫用である旨主張して、その取消しを求めた。

 裁決は、課税庁が既に収集した資料を基礎に正当な課税標準を求めることも調査の範囲に含まれると解釈した上で、源泉所得税は当初告知処分に係る源泉徴収簿等の関係資料及び源泉所得税の納付事績等の既に収集した資料等、法人税は当初減額更正処分の関係資料、法人税の確定申告書及び同付属書類等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討して行われており、調査手続きを欠く違法な処分とは認められないと認定した。

 さらに、課税庁が自ら行った処分に瑕疵を発見した時は、その瑕疵が実体的なものであれ、手続的なものであれ、適正な課税の確保実現を図るため、これを取り消して新たな処分をなし得るとも解釈、原処分庁が国税通則法36条(納税の告知)1項2号の規定に基づいて各告知処分等を行ったことに違法は認められないとして、請求人の主張を斥けている。

(国税不服審判所、11.02.14裁決)