取引先の倒産に伴う手形債務の負担は不測の事態と判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:07/06/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 納税猶予の申請をめぐって納税猶予の要件を充足しているか否かの判断が争われた審査請求事案で、国税不服審判所は融通手形の受取人の倒産による手形債務の負担が審査請求人に帰責性があるとはいえず、売掛金等の回収が不能になった場合と同視できると判断、納税猶予の不許可処分を全部取り消した。

 この事案は土木工事業を営む請求人が、取引先の倒産に伴う資金繰り悪化を理由に納税猶予の申請したところ、原処分庁が納税猶予の要件を充足していないことを理由に不許可処分としたため、その取消しを求めていたもの。原処分庁は取引先の倒産という事実だけで納付困難になっていると認定することはできないと指摘。というのも、融通手形の不渡りから手形債務を負い、取引先が限定された原因は請求人自身にあるという認定からだ。

 これに対して裁決は、国税通則法46条2項各号が定める納税猶予事実とは、納税者の責に帰すことのできない金銭納付を困難ならしめることをいうと解釈。その解釈の上で、請求人が取引先に振り出した各手形は経営困難に陥った取引先の資金調達のため、手形の原因行為なくして振り出されたいわゆる融通手形であるものの、それは請求人の主要な取引先が倒産すれば売掛債権が回収できなくなることから止むを得ず振り出したものであると認定した。

 その結果、手形の振出し及び取引先の倒産による手形債務の負担については請求人に帰責性があるということはできず、不測の事態によって資金繰りが困難になったという点で、納税猶予該当事実である売掛金等の回収が不能になった場合と同視できるという判断から、納税猶予申請の不許可処分を全部取り消している。

(国税不服審判所、2009.07.06裁決)