取得時効の確定判決を理由にした更正の請求を妥当と裁決
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:07/08/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 相続開始前に使用貸借ではなく取得時効の完成の事実を認めた判決の確定が、更正の請求を認める事由に該当するか否かの判断が争われていた事案で国税不服審判所は、判決の確定は土地の価額に影響を及ぼすべき事情として相続税の課税標準ひいては税額の計算に影響を与えるものであると判断、原処分を全部取り消す裁決を下した。

 この事案は、審査請求人等が相続した土地について、相続開始前の取得時効の完成を認めた判決の確定を理由に更正の請求をしたところ、原処分庁が更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しを求めていたもの。

 相続開始時点に、使用貸借つまり相手方に取得時効の完成が認められないという判断から自用地として申告したが、その後、相手方の取得時効の完成が判決で確定したため、申告の基礎事実と判決で確定した事実とには相違があるという考えから、原処分の取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して裁決はまず、相続開始時点において時効の援用以外の取得時効の要件が満たされており、請求人らの意思如何にかかわらず、相手方の時効の援用があれば一方的に所有権が時効取得される状態にあったと認定し、土地の価額に影響を及ぼす事情として相続税の課税標準、税額の計算に影響を与えるものであると指摘した。

 つまり、請求人等が所有権を確保しようとすれば、時効を援用する相手方に、課税時期現在の土地の客観的交換価値に相当する金員の提供を要するのが一般的であり、価額に影響を与える要因として考えれば、土地の価額と提供を要する金額は同額であるから、結局、その財産の価額は零円になると理解するのが相当と判断、審査請求を全面的に認める裁決を下している。

(国税不服審判所、2007.11.01裁決)