滞納者の詐害意思は第二次納税義務の成立要件ではないと判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:12/07/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 滞納者の詐害意思の有無が、国税徴収法39条が定める第二次納税義務の成立要件に該当するか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は滞納者に詐害意思のあることが第二次納税義務の成立要件ではないという解釈から、譲渡に詐害意思がないことを理由に納付告知が違法であるということはできないと判断、棄却した。

 この事件は、審査請求人が滞納者(夫)から土地の持分の贈与を受けたことに対し、原処分庁が国税徴収法39条(無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務)が定める滞納者が行った無償又は著しく低い額の対価による財産の譲渡、債務の免除その他第三者に利益を与える処分(いわゆる無償譲渡等)に当たると認定、第二次納税義務の納付告知処分をしてきたのが発端になったもの。

 そこで請求人が、滞納者の国税の差押えを免れるためにされた贈与ではないから無償譲渡等の処分には当たらないなどと主張、その全部取消しを求めて審査請求したという事案である。請求人側は、国税徴収法39条を理由に第二次納税義務を課すには詐害の意思が必要であると反論した上で、滞納者が請求人に行った土地の持分の贈与には詐害の意思はないから、無償譲渡等の処分に該当しない旨主張して処分の取消しを求めた。

 これに対して裁決は、第二次納税義務制度は滞納国税の法定納期限の1年前の日以後に滞納者が行った無償譲渡等の処分を対象とするなど時期及び対象を限定し、その効果は処分を取り消すというものではなく、受益者が特殊関係人の場合にはその処分により受けた利益の限度において、そうでない場合にはその処分により受けた利益が現に存する限度において、受益者に第二次納税義務を負わせるにとどまるものであると指摘。しかも、その場合の第二次納税義務は国税徴収法32条1項が定める告知手続によって確定するものであるから、訴訟手続を要しないとされることなど、民法424条とは明らかに異なる法律的構成となっているとも指摘した。

 つまり、民法424条の詐害行為取消権と国税徴収法39条の第二次納税義務制度とは、その対象及び効果等が異なり、それに応じてそれぞれ異なる適用要件等が条文上定められているとも解釈されることから、請求人の主張を採用することはできないとして棄却している。
 
(国税不服審判所2015.01.19裁決)