附帯決議を理由にした更正処分の取消しの請求を棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/04/2004  提供元:21C・TFフォーラム



 偽りその他不正の行為がある場合は更正決定の期間は7年間遡及できるが(通則法70条5項)、その更正処分が国会附帯決議違反であるか否かの判断が争われた事案で、国税不服審判所は大口・悪質な不正計算が想定されたために調査が必要であると原処分庁が判断したのは相当であり、更正処分に違法な点はなかったと判断、審査請求を棄却した。

 この事案は、美容業を営む同族会社が取引先から受領した紹介手数料等を代表者個人名義の預金口座に入金し、一部を法人の益金に算入しなかったことが、通則法70条5項の「偽りその他不正の行為」に当たるか否かの判定が争われたもの。

 審査請求人は更正決定等の期間制限が5年から7年に延長された昭和56年の衆参両議院大蔵委員会で「更正、決定等の制限期間における調査に当たっては、高額かつ悪質な脱税者に重点を置き、中小企業者を苦しめることのないよう特段の配慮をする」旨の附帯決議がされたことを挙げ、中小企業者に対して過度の調査、僅少な金額についてまで課税していることは昭和56年の附帯決議に反していると主張、原処分の取消しを求めていた。

 これに対して裁決は、附帯決議は調査の際に尊重する趣旨のものではあるが、原処分庁は紹介手数料等が請求人の公表外銀行預金口座に振り込まれている事実等から大口・悪質な不正計算を想定、7事業年度遡及の調査が必要と判断したものであり、その判断は相当であったと指摘。また、更正処分も請求人の行為が偽りその他不正の行為に該当したことからなされたのは明らかで違法な点はないと判断、審査請求を棄却した。しかし、少額な事案である。国会の附帯決議はやはり軽いものであろうかと考えさせられる裁決である。

(国税不服審判所 03.02.20裁決)