当初から相続財産の過少申告を意図したものと認定、棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:03/20/2006  提供元:21C・TFフォーラム



 相続税の申告書の作成を依頼した税理士に対して、相続財産の一部である被相続人名義の定期預金等の存在を知らせず、これを申告書に記載せずに申告をした場合に、重加算税の賦課要件である隠ぺい・仮装の行為があったか否かの判断が争われた事案で、国税不服審判所は当初から財産を過少に申告(いわゆることさらの過少申告)することを意図したことを外部からうかがい得る特段の行為をしていると認定、審査請求を棄却した。

 この事案は、相続税の申告後の税務調査の際に調査担当職員から被相続人の財産に関する書類の提示を求められ、普通預金通帳等の残高証明書を提示するとともに、調査官からの修正申告の慫慂に応じて修正申告書を提出したところ、原処分庁が過少申告加算税・重加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めていたというものだ。

 審査請求人は、預金の申告漏れは残高証明書の税理士への提示漏れという単純ミスによるものであり、隠ぺい・仮装の行為に基づくものではないと反論、賦課決定処分のうち過少申告加算税の額を超える部分は取り消されるべきであると主張していた。

 しかし裁決は、請求人が被相続人の預貯金の通帳、印鑑等の保管場所を知っていたほか、相続開始2日前に妻に2000万円を引き出させている等々の事実を認定。また、定期預金等の存在を知らせないまま税理士も含めて他の相続人と遺産分割協議を行った上で申告に至った事実も指摘。そうした事実認定から、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図した上で、その意図を外部からもうかがい得る行為をしたのであり、その意図に基づく過少申告行為は隠ぺい・仮装の行為に当たると判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2005.06.13裁決)