納税猶予申請の不許可処分に裁量権の逸脱があったと判示
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:01/15/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 消費税等の納税猶予申請に対する不許可処分に税務署長の裁量権の範囲の逸脱・濫用があったか否かの判断が争われた事件で名古屋地裁(福井章代裁判長)は、担保に供すべき財産がなく、担保を徴することができない特別の事情があると認められることから納税猶予の要件を満たしていると認定するとともに裁量権の範囲を逸脱した違法があったと判示、原処分庁側の主張を斥けている。

 この事件は、鉄鋼業を営む個人事業者がやむを得ない事由による売上の減少等を理由に消費税等の納税猶予の申請をしたところ不許可処分を受けたため、その取消しを求めて提訴したという事案。併せて、料理飲食業、家電小売業を営む個人事業者も提訴、納税猶予申請の不許可処分の取消しを求めていた。
 
 つまり納税猶予申請に対する不許可処分が、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるか否かに争点があったわけだが、原処分庁は納税者が提出した資料では調査期間の損益計算を行うことができず、売上期間の減少率も16.4%にとどまっているため、納税猶予の要件をクリアしているとはいえないから不許可処分は適法と主張して、請求の棄却を求めていた。

 これに対して判決は、納税猶予制度に係る税務署長の裁量権、猶予取扱要領の趣旨に触れた上で、同要領の定めに従って判断される限り、裁量権の逸脱、濫用があるとまでは評価できないと解釈。しかし、事実認定の結果、著しい損失が認められ、猶予該当事実があったと指摘すると同時に、猶予取扱要領が定めている数値基準には合理性があるものの、納税猶予の事実が認められないとした判断はこの数値基準に合致せず、その基準によらないことに合理的な理由もないと判示して、原処分庁の判断には裁量権の範囲の逸脱があったと判断して、納税者側の請求を認容した。

 その一方で、料理飲食業、家電小売業を営む個人事業者からの提訴に対しては著しい売上の減少があったとは認められないと認定、結局、不許可処分は適法と判示して請求を斥けている。

(2013.04.25名古屋地裁判決、平成23年(行ウ)第71号)