調査手続きの違法は修正申告の効果に影響を及ぼさないと判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:10/14/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 調査手続きの違法及び錯誤を理由に、修正申告及び期限後申告に対する重加算税の賦課決定処分の取消しを求めた事件で、国税不服審判所は、各修正申告等に署名押印があることから、請求人の意思に基づいて行われたものと認定、審査請求を棄却した。

 この事件は、建築設計業を営む審査請求人の所得税及び消費税等の修正申告に対し、原処分庁が重加算税等の各賦課決定処分を行ってきたため、請求人が調査の手続きに違法があったと主張、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり請求人は、

1)

国税通則法74条の9が定める調査対象期間の説明、同法74条の11が定める調査結果の内容の説明や法的効果の教示がなかった

2)

調査対象期間の説明及び調査結果の内容の説明がなかったため、どのような内容か分からないままに修正申告書及び期限後申告書に署名押印して提出したものであり錯誤があった
――ことから、各修正申告等は調査手続きの違法又は錯誤により無効である旨主張したわけだ。

 しかし裁決は、そもそも調査手続きの違法はそれのみを理由に修正申告及び期限後申告の有効性に影響を及ぼすものではないと解釈できることから、調査手続きに違法があったとしてもそのことのみで修正申告及び期限後申告が無効になることはないと判断。

 また、各修正申告書等に署名押印があることから、各修正申告等が請求人の意思に基づいて行われたと推定でき、

1)

修正申告書及び期限後申告書は具体的な納税義務を発生させるものであるから内容を確認せずに署名押印することは通常あり得ない、

2)

調査担当職員は調査期間中に調査対象となる税目と年分を伝えていると認められ、請求人は調査対象期間を認識していた、さらに

3)

調査担当職員は調査結果の内容の説明を行い、請求人も調査結果の内容を知っていた
――と認定。これらの認定の結果、錯誤があったとは認められず、各修正申告等は無効とはならないと判断して、審査請求を棄却した。

(国税不服審判所2015.03.26裁決)