住所地は勤務地と認定、勤務地の税務署長に処分権限ありと判示
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:10/14/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 国家公務員が住宅ローン控除の適用要件を満たしていないことから勤務地を所轄する税務署長から更正処分を受けたことをめぐり、その処分権限が勤務地・住所地いずれの税務署長にあるのかの判断が争われた事件で東京地裁(川神裕裁判長)は、更正処分が行われた時点の住所地が勤務地であると認定できる以上、勤務地の宿舎を所轄する税務署長に更正処分の権限があると判示、納税者側の請求を棄却した。

 この事件は、新居を取得して住宅ローン控除の適用を受けていた公務員が地方の勤務地に異動後、異動先の勤務地を所轄する税務署に同控除の適用を求めて還付申告したのが発端。しかし原処分庁が適用要件を満たしていないと判断、更正処分等をしてきたため、本人訴訟を起こし、その取消しを求めたという事案である。

 住宅ローン控除の適用可否に加え、住所地を所轄する税務署長ではなく、勤務地を所轄する税務署長に処分権限の有無があるかも争点になった。というのも、預金通帳等やクレジットカード等の住所を家屋の取得地に集中させ、町内会費を支払うとともに選挙権を行使するなどして、住民票を家屋の取得地に置いていたという事情があったからだ。そこで、納税地は住民票があり、住民税を納めている家屋の取得地を所轄する税務署長に処分権限があると主張したわけだ。

 しかし判決はまず、客観的な生活の本拠たる実体を有していたのは勤務地の宿舎であると判断して、住宅ローン控除の適用を否定した。また、住民票上の住所を異動していないため、家屋の所在地を自らの基本的な住所地とする旨の意思を有していたことは認められるものの、主観的な意思のみにより住所地を判断することは相当ではないと指摘。その上で、更正処分等がされた時点における客観的な住所地は勤務地の宿舎であるということができる以上、勤務地を所轄する税務署長が更正処分等の時点において処分権限を有していたことができると判示、納税者側の主張を斥けている。

(2014.01.21東京地裁判決、平成25年(行ウ)第59号)。