納税者に脱税の責めを負うべき理由は見いだしがたいと判決
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:11/19/2002  提供元:21C・TFフォーラム



 税理士が税務署員に協力させて納税者の課税資料を廃棄、譲渡所得税の申告も納税もしなかったことに対して、納税者に仮装・隠ぺい、不正の行為を認定、重加算税等が賦課されたことの適否が争われた事件で、東京高裁(江見弘武裁判長)は納税者の仮装・隠ぺいを認定した一審判決を否定、原処分を全面的に取り消す逆転判決を下した。

 この事案は、納税者が税理士に譲渡所得税に係る確定申告手続を委任、1800万円と税務代理報酬を支払ったものの、その税理士は申告も納税もせず、支払いを受けた1800万円を領得したというもの。税理士は税務署員に納税者にかかる課税資料を廃棄させて譲渡所得税の脱税が発覚しないように協力させ、税務署員に850万円の協力金が支払われたという悪質な事案だ。

 事件の発覚に伴って、税務署員は加重収賄罪によって懲役3年の有罪判決、税理士は脱税、贈賄に係る罪で懲役4年余、罰金7000万円の実刑判決を受ける一方、原処分庁が納税者に対して、税理士が所得税をほ脱することを容認した上で、その具体的方法を税理士に委ね、脱税報酬を支払っていたものと認定、過少申告加算税・重加算税の賦課決定処分をしてきたことから、その取消しを求めて提訴したものだ。

 一審は原処分庁の主張を支持、納税者が隠ぺい・仮装の行為を行い、偽りその他の不正の行為によって税額を免れていたと認定、取消請求を棄却した。そこで、控訴してさらに原処分の取消しを求めていたというわけだが、控訴審は一転、委任者である納税者は税理士に申告を委任したにとどまり、脱税の責めを負うべき理由は見いだしがたいと判示、納税者の主張を全面的に認容する逆転判決を下した。

(2002.01.23 東京高裁判決、平成13年(行コ)第77号)