3月決算上場企業のGC注記24社、重要事象43社
カテゴリ:09.企業財務 トピック
作成日:06/13/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 2016年3月期決算を発表した上場企業2447社のうち、監査法人から「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」(以下、GC注記)が付いた企業は24社だったことが、東京商工リサーチが8日に発表した「上場企業の『継続企業の前提に関する注記』調査」結果で分かった。前年度本決算(2015年3月期、27社)より3社減少し、2015年9月期中間決算(22社)より2社増加した。

 また、GC注記に至らないが、事業継続に重要な疑義を生じさせる事象がある場合に記載する「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)は43社で、前中間期(38社)より5社増加した。GC注記と重要事象の合計数は、リーマン・ショック直後の2009年3月期にピークの145社を記録、以降は減少推移をたどってきた。2015年3月期で6年ぶりに増加に転じたが、上場企業の中でも大手との二極化が鮮明となっている。

 同調査は、3月期決算で東証から新興市場までの全証券取引所に株式上場する企業を対象に、2016年3月期決算短信で「GC注記」及び「重要事象」が記載された企業の内容、業種を分析したもの。前中間期にはなかったが、新たにGC注記が付いたのは8社。このうち(株)郷鉄工所(東証2部、岐阜県垂井町)をのぞく7社は、前中間期では「重要事象の記載」にとどまっていたが本決算ではGC注記が付いた。

 重要事象の記載があった上場企業43社のうち、前中間期では記載がなかったが、当決算で新たに記載されたのは19社(構成比44.1%)と4割超を占めた。再建の行方に注目が集まるシャープ(株)(東証1部、大阪市阿倍野区)は3月末時点で債務超過に転落した。前中間期に引き続き本決算でも重要事象が記載され、今後東証の上場基準により2部に指定替えとなる見込み。

 理由別では、GC注記24社のうち、22社が「重要・継続的な売上減」、「損失計上」、「営業キャッシュ・フローのマイナス」など、本業不振が理由。次いで「財務制限条項に抵触」、「債務超過」、「資金繰り・調達難」がそれぞれ3社と続き、「借入過多・財務悪化」が2社だった。債務超過は1年内に解消できなければ原則上場廃止となるため、債務超過企業の3社は、業績回復による利益確保か新たな資本増強策などが求められている。

 上場企業の倒産は、リーマン・ショック時の2008年度の45社をピークに減少傾向が続き、2015年度は2社にとどまった。上場企業の倒産が沈静化する一方で、GC注記と重要事象の記載企業数が増勢に転じたのは、上場企業の相次ぐ会計不祥事に対し、監査法人の監査が厳格化・保守化していることが背景にある。ただ、円安を背景に好決算が続出した大手に対し、業績不振からの脱却が難しい企業との二極化は鮮明になっている。

 同調査結果はこちら