15年度「コンプライアンス違反」倒産は1割減の190件
カテゴリ:09.企業財務 トピック
作成日:04/13/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 東京商工リサーチがこのほど発表した「コンプライアンス違反倒産企業の倒産調査」結果によると、2015年度に「コンプライアンス違反」が一因で倒産した企業は前年度比12.0%減の190件だった。金融機関が中小企業のリスケ要請に柔軟に応じているなどで、企業倒産の沈静化が図られ、「コンプライアンス違反」企業の経営破綻も表面化するケースが少なくなっているとみられる。

 190件の違反内容別では、不正な会計処理や虚偽の決算書作成などの「粉飾」が28件(前年度比7.6%増)で前年度を上回った。また、脱税や滞納など「税金関連」が50件(同26.4%減)、補助金や介護・診療報酬などの「不正受給」が14件(同22.2%減)、詐欺・横領が10件(前年度11件)、賃金未払いなどの「雇用関連」が9件(同3件)、食品の産地偽装など「偽装」が4件(同7件)だった。

 190件の負債総額は前年度比80.9%増の2801億8000万円と大幅に増加。これは年金資産消失事件を起こした、年金資産運用の(株)MARU(旧・AIJ投資顧問)(東京・負債1313億円)の大型倒産が影響した。ただし、全体では負債1億円未満が66件と、小規模倒産が3割強を占めた。このほか主な倒産事例では、ワイン取引について継続的に虚偽報告をしていた、国内唯一のワイン投資ファンド会社の(株)ヴァンネット(東京都・負債38億2700万円)がある。

 産業別では、「サービス業他」が53件(構成比27.8%)で最多、「製造業」28件、「建設業」26件、「卸売業」24件、「運輸業」20件、「小売業」18件などが続く。最多のサービス業他では、「飲食関連」と「医療、老人福祉関連」がともに10件、「建築設計業」が4件、「ホテル・旅館」が3件など。これらの中には売上不振から税金を滞納したケースや、経営不振から介護報酬や診療の不正請求などに手を染めたケースもみられた。

 企業の社会的責任が重視されるとともに、コンプライアンスの徹底が金融機関の融資継続の条件や、企業間の取引条件にも重要な要素になってきたが、こうした中でもコンプライアンス違反企業は後を絶たない。粉飾決算や、脱税・税金滞納、不正受給などは業績不振の企業に多く、2015年度調査では全体の件数が減少したものの、違反内容別では「粉飾」の増加が目を引く。景気の先行きに不透明感が出てきた中で今後の動向が注目される。

 同調査結果はこちらを参照のこと