「監査人は強い態度で監査業務に臨むこと」~JICPA会長通牒
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 トピック
作成日:01/29/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 昨年来、東芝の「不適切会計」問題を始めとする会計不祥事に揺れる会計監査業界。同社の監査を担当していた新日本有限責任監査法人は、金融庁から、課徴金約21億円、契約の新規締結に関する業務停止3ヵ月、および業務改善命令の処分を受けた。こうした事案等を受けて、日本公認会計士協会(JICPA、森公高会長)は1月27日、「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」(会長通牒平成28年第1号)を発出した。下記の点に、特に留意するよう会員に要請している。

 1)リスク・アプローチに基づく監査、
2)職業的専門家としての懐疑心、
3)経営者による内部統制を無効化するリスク、
4)会計上の見積りの監査、
5)監査チーム内の情報共有、
6)審査、
7)監査時間・期間の確保。

 目立つのは、東芝監査の“失敗”を踏まえての記述。例えば、1)には「被監査会社又は経営者の社会的名声による予断にとらわれることなく、内部統制を含む企業及び企業環境・ビジネスを適切に理解する必要がある」。2)には「リスクに対応した実証手続を実施する際には、被監査会社の説明を鵜呑みにすることなく、説明の裏付けとなる適切な監査証拠を入手する」。3)には「財務諸表の重要な虚偽表示に経営者が関与する場合、経営者の姿勢は組織全体に大きな影響を及ぼし、また、その地位を利用して内部統制の無効化をもたらす。~」など。

 最後に、「監査人は強い態度で監査業務に臨むことが必要である。~会計不祥事が繰り返されることのないよう、職業的懐疑心をもって監査を実施しているかを厳しく自問していただきたい」と締め括っている。

 なお、JICPAの監査業務審査会は同日、「不正による重要な虚偽表示を見逃さないために監査人は何に留意すべきかについて、改めて注意喚起するために監査提言集(特別版)」も公表した。今回の打ち出しが、監査の現場にどのような影響を与えるのか(例えば、監査時間の増加、しいては監査報酬の増加に繋がるのか)、要注目だ。

 詳細は、こちらを参照のこと。