日税連、財務省の「日本型軽減税率制度」(案)に反対を表明
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 トピック
作成日:09/30/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 消費税の軽減税率制度については、平成26年度与党税制改正大綱において、「『社会保障と税の一体改革』の原点に立って必要な財源を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する」と明記された。これを受け、与党税制協議会において、そのあり方について検討が続けられてきたが、議論の停滞を受け、財務省が「日本型軽減税率制度」(案)を同協議会に提示している。

 そこで、日本税理士会連合会(神津信一会長)では、かねてから税制改正建議書等では、区分経理の困難性、事業者負担及び低所得者対策等の観点から、単一税率の維持を主張した上で「社会保障・税番号制度の運用状況を踏まえて、給付を低所得者層に限定した給付付き税額控除制度を導入することを検討すべきである。」としているところだが、改めて財務省の「日本型軽減税率制度」(案)に反対を表明している。

 財務省案は、建議書等で指摘してきた単一税率の維持・インボイス制度導入の問題点等を考慮するなど、建議の趣旨に概ね沿ったものとなっており、一定の評価はできるとした上で、「財務省案は、マイナンバーカードを利用した『還付ポイント』を導入するなど、新たに検討すべき項目も多くある。今後、これらの課題について検討を加えつつ、消費税率引上げに伴う負担軽減策についての議論を深化させていく必要がある」との考えを示した。

 なお、日税連は、平成28年度税制改正に向けた建議のなかで、消費税の軽減税率制度の導入に反対する理由として、

1)

軽減税率により税収が減少すると財政再建が損なわれることとなり、税収補てんのために、標準税率のさらなる引上げ等が必要となる

2)

軽減税率による税収減収額のうち、低所得者世帯に効果が及ぶ軽減税額は限定的であり、低所得者に対する負担軽減策としては極めて効率の悪い制度である。

 さらに、

3)

軽減税率の適用範囲を合理的に設定することは極めて困難であるとともに、その適用の判断に係る納税義務者の事務が複雑となり、徴税コスト等も増大する

4)

インボイス制度の導入が必要となり、納税義務者の事務負担が増大する

5)

軽減税率が導入された場合、現行の簡易課税制度を合理的な制度として存続させようとすると、事業区分の細分化等が必要となり、複雑な課税制度となってしまう
などの反対理由を挙げている。