IFRS普及の妨げないような法人税改正を要望
カテゴリ:13.会計士・税理士業界, 15.税制改正 トピック
作成日:08/01/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 日本公認会計士協会は7月29日、平成29年度税制改正意見・要望書を公表した。今回は、「政策的要望」と「個別的要望」に分類し、「政策的要望」は、主としてわが国の税制の構造的問題に関して意見・要望を行うもので、税の中立性の原則に立脚し、IFRS普及の妨げにならないよう必要な法人税法改正を行うことなど合計8項目の意見・要望を行っている。また、「個別的要望」は、税目ごとに合計60項目の意見・要望を行っている。

 政策的要望では、まず、法人税法における課税所得計算と企業会計の調整について、1) 税の中立性の原則に立脚し、IFRS普及の妨げにならないよう必要な法人税法改正を行うこと、2)法人税法の改正に当たっては、企業会計の基準を十分に尊重することを要望。IFRSの国際的な普及が進むなか、企業が選択できる会計基準の幅が広がる一方で、税における損金経理要件が妨げとなり、この点、税の中立性を損なうおそれがあると指摘。

 今後はIFRS等の上場企業に適用される会計基準や法制度をめぐる論議を注視した上で、税務と会計が結果として異なることもあり得ることを前提に、例えば、別表上申告調整したものも会社の確定した意思表示として広く認めるなど、損金経理要件の見直しを弾力的に検討すること。また、法人税法の改正に当たっては、企業会計の基準を十分に尊重し、会計と税務がいたずらに乖離することのないよう、見直し又は配慮を求めている。

 次に、消費税の軽減税率制度及びインボイス制度について、1)消費者及び事業者が混乱しないよう軽減税率の対象品目の区別が明瞭な制度設計をすること、2)軽減税率制度の導入に当たっては、新たな益税が発生しないよう配慮すること、3)軽減税率制度とともに導入されるインボイス制度について、事業者において混乱のない導入可能な制度設計とすること、の3点を要望事項として掲げている。

 2)は、インボイス制度が導入されるまでの間の「簡素な方法」及び「税額計算の特例」は、少なからず益税の発生を伴うものだが、現行の消費税法においても、免税業者や簡易課税業者が存在し、既に益税が発生している状況であるため、これ以上の益税を生じさせない制度設計を求めたもの。また、3)は、インボイス制度導入で、事業者への経済的、事務的負担の増大が予想されるため、事業者のこれらの負担を配慮した制度設計を求めたもの。

 同税制改正意見・要望書はこちら