会社法規定の所在不明株主の株式市場売却にも特例適用
カテゴリ:04.資産税 トピック
作成日:03/16/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 会社法に規定する所在不明株主の株式の市場売却による所得は、株式等に係る譲渡所得等となり、その所得等には軽減税率や譲渡損失の繰越控除など各特例を適用できることが、東京国税局の文書回答で明らかになった。照会者は、平成20年度改正で原則非公開となったことから不明だが、所在不明株主が持つ上場株式の発行会社と思われる。

 会社法では、所在不明株主とは、5年以上継続して、1)株主に対する通知や催告が到達していない場合や、2)剰余金の配当を受領しなかった場合のいずれにも該当する株主とされ、発行会社はその株式を競売し、その代金をその株式の株主に交付することができるが、市場価格がある株式は競売に代えて市場売却できると規定している。

 また、会社法に基づく公告の期間内に、利害関係人が異議を述べなかったときは、その株式に係る株券はその期間の末日に無効になるが、所在株主の株主としての権利はなくならず、会社に対してその売却代金の支払を請求できる権利を持つこととなり、会社はその株主からの請求に対し、株式売却代金をその株主に交付することになるとされている。

 そうすると、会社法に基づく株式の市場売却は、所在不明株主が自ら株式を売却するものではないが、所在不明株主が売却代金の支払を請求し得る権利は、その保有していた株式の売却によって実現したものといえるから、1)市場売却による所得は株式等の譲渡所得等に当たる。

 さらに、2)譲渡所得等の総収入金額に収入すべき時期は、株式の引渡しがあった日である市場売却の日、3)市場売却が金融商品取引業者等への売委託の場合は、軽減税率や譲渡損失の繰越控除、取得費の特例など、措置法上の各特例の適用がある。こうした所在不明株主の株式が市場売却された場合の課税関係を、東京局が文書回答のなかで認めたわけだ。