就労抑制につながる税制、高齢者にも“○○万円の壁”
カテゴリ:02.所得税 トピック
作成日:07/22/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 平成28年度税制改正に向けて、女性の就労を抑制する制度だとして、「103万円の壁」の是正が検討されている。妻の(配偶者)所得が103万円を超えると、夫の所得税課税額が増え始めることから、妻の所得を103万円に抑えるインセンティブが生じる問題だ。一方、労働力人口確保のためのもう一つのフロンティアである「高齢者」にも、就労抑制につながる仕組みが存在する、との指摘は第一生命経済研究所のマクロ経済分析レポートだ。

 レポートによると、60〜64歳で働く場合に3つの壁があるという。第一の壁は、厚生年金保険料等の負担が生じることで目先の手取り所得が減じる「フルタイム×4分の3の壁」。第二の壁は、在職老齢年金の削減が始まる「月あたり年金+賃金=28万円の壁」で、高所得者の場合は年金が全額支給されなくなるケースも出てくる。第三の壁として、雇用保険の高年齢雇用継続給付金の削減が始まる「60歳時点賃金×61%の壁」がある。

 これらの壁は、所得を増やしても手取り収入が増えない「手取り逆転」が起こるケースがあり、就労抑制のインセンティブが生じてくる。65歳以降については、高年齢雇用継続給付がなくなり、第三の壁はなくなるが、引き続き第一の壁は残る。また、第二の壁である在職老齢年金の所得要件も緩和される。しかし、在職老齢年金制度によって削減される年金はただ失うだけであり、これが就労意欲を削いでいる面はある。

 パート時給が上昇傾向にあるなか、「壁」を意識して労働時間を減らす動きがあるとも聞かれる。社会保険料が労使折半の仕組みのもとでは、企業側にも労働者側にも労働時間を減らすインセンティブが生じ得る。レポートは、「所得額に応じて税・社会保険料負担が突如発生する仕組みは是正すべきだ。在職老齢年金についても、就労インセンティブを削がない制度設計が求められる」との意見を示している。

 さらに、「定年後の高齢者が、企業にとってコストではなく、経営資源として活躍できる場を作っていくことが企業には求められる。そして労働者側も、60歳を超えても活躍、長く働けるスキルを身につけていくことが求められる時代になる」と指摘。特に高齢者の就労が広がれば、高齢者は社会保障を“貰う側”から“支える側”になる。これは社会保障問題の抜本的な処方箋でもある、と提言している。

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