相続税、大増税時代の税務調査とは
カテゴリ:05.相続・贈与税 トピック
作成日:03/06/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 基礎控除引下げによる相続税増税は来年1月からスタート。相続税が「身近な税金」になる日も近いが、こうした中、国税当局が深度ある相続税調査に向けて準備を進めている。中でも単なる申告漏れと脱税の境界線には強い関心を寄せており、重加算税の対象となる「隠ぺい行為」の認定方法について、調査マニュアルで念入りに確認しているところだという。

 例えば、現金や名義預金の帰属をめぐり見解の相違があった場合の対応について。相続人がすでに被相続人から贈与されたと思っている財産について、税務署側が「相続財産に含まれる」と指摘することは少なくない。

 マニュアルによると、このような場合はまず財産の帰属についての認定作業を行う。その際に確認するのが、原資の所有者、管理者および運用者、相続人固有の財産の運用状況との比較、相続税申告書に計上しなかった理由など。このうち管理者および運用者については、財産の預け入れや購入等の経緯、その行為者、使用印鑑、証書や使用印鑑等の管理および保管状況、書き換え等の行為者、通知書等の送付先、利息等の取得者や処分者??などを確認する。

 「相続財産であることを認識しながら隠ぺい行為を行っていたか」を判定するのは、その次のステップだ。しかし、「認識」の有無を客観的に証明するのは簡単ではない。そこで重要になってくるのが、相続人の「証言」や「被相続人の財産であることを前提とする行動を示す資料」についての証拠化だという。

 相続税調査では帳簿書類等の客観的な証拠が不足することが多いため、相続人の「証言」が事実認定の基礎として重要になるが、仮に相続人が「相続財産を隠ぺいした」と証言したとしても、後にその証言が覆された場合、一瞬で課税根拠を失ってしまう。そこで、相続人への質問検査の内容について、聴取書や調査報告書をその都度細かく作成し「証言の証拠化」を行うことで、証言が覆った時の判定資料にするのだという。

 課税上のグレーゾーンについては、過去の裁決事例や判例も大きな判断材料となる。税務署は、この手の資料を大量に携えて調査にやってくる。不当な課税につながらないよう事実関係をきちんと整理しておきたい。