為替差損益の収入すべき金額は口座から払い出した時に実現
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:02/21/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 外国通貨建預金の払出しによって生じた為替差損益の金額の計算上、総収入金額に算入すべき金額と時期の判断が争われた事件で国税不服審判所は、為替差損益は外国通貨を円貨に交換して外国通貨建預金の口座から払い戻した時に生じた各為替差損益の額の合計額とされるべきであると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人の所得税及び復興特別所得税の申告に対して、原処分庁が外貨預金の払出しにより生じた為替差益を雑所得の金額の計算上総収入金額に算入するなどの更正処分等を行ってきたことから、請求人側が原処分庁の認定した為替差益の額が過大であると主張して、原処分等の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 請求人側は、外国通貨建預金の払出しによって生じた為替差損益の金額は、請求人名義の外国通貨建預金の口座を開設した年から最終的に払い出した日の年までの間にわたって継続して行われた取引であるから、同期間を基礎に計算されるべきである旨主張して、原処分の一部取消しを求めた。つまり、為替差損益の収入すべき金額が実現した時期がいつになるかについて判断を下したのがポイントになったわけだ。

 外貨建取引の換算を定めた所得税法57条の3は、居住者が外貨建取引を行った場合の外貨建取引の金額の円換算額は外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算する旨規定している。

 そこで裁決はまず、請求人が行った外国通貨建預金の払出しによって生じた為替差損益については、外国通貨を円貨に交換して外貨預金の口座から払い出した時に所得税法36条1項が定める「収入すべき金額」が実現したものとして、所得を認識する必要があると解釈した。

 その結果、請求人が申告した年分の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、請求人がその年中に外国通貨を円貨に交換して外国通貨建預金の口座から払い出した時に生じた各為替差損益の額の合計額とされるべきであると指摘して、審査請求を棄却する裁決を言い渡した。

(2016.06.02国税不服審判所裁決)