評価減を建築基準法等の制限の有無に限定する必要はないと判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:03/14/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 相続した土地の一部を私道供用宅地、貸家建付地のいずれで評価すべきかの判断が争われた事件で最高裁(山崎敏充裁判長)は、建築基準法等の制約がある土地でないことや市の指導を受け入れて開発行為を行うことが適切と考えて選択した結果として設置された私道であることを理由に、減額の必要がないとした原審の判断には違法があると指摘して破棄した上で、更に審理を尽くさせるため原審に差戻しを命じる判決を言い渡した。

 この事件は、相続した土地の一部を私道供用宅地と判断してした相続税の申告に対し、原処分庁が貸家建付地と判断して否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴したもの。

 その結果、控訴審の東京高裁が、1)建物敷地の接道義務を満たすための建築基準法上の道路は、道路内の建築制限や私道の変更等の制限等に制約がある、2)所有者が事実上一般の通行の用に供しているものは特段の事情のない限り、私道を廃止して通常の宅地として利用することも可能であると指摘した上で、私道とは1)のような制約があるものと解するのが相当であると判断して棄却したため、控訴審の判断の取消しを求めて納税者側が更に上告したという事案である。

 最高裁は、財産の評価上、私道の用に供されている宅地につき客観的交換価値が低下するものとして減額されるべき場合を、建築基準法等の法令によって建築制限や私道の変更等の制限などの制約が課されている場合に限定する必要はないと指摘した上で、宅地の財産評価における減額の要否及び程度は、建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、宅地の位置関係、形状等や道路としての利用状況、道路以外の用途への転用の難易等に照らして客観的交換価値に低下が認められるか否か、その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があると判断。

 そうした判断から、道路以外の用途への転用が容易とは認め難いと認定する一方、共同住宅の建築のための開発行為が被相続人の選択の結果であっても、減額評価の必要がないとはいえないと判示した。結局、原審の判断には法令違反があると指摘して破棄、更に審理を尽くすよう差戻しを命じる判決を言い渡した。

            (2017.02.28最高裁第三小法廷判決、平成28年(行ヒ)第169号)