いわゆる黒服従業員は源泉徴収義務者ではないと認定、無罪判決
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/10/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 高級クラブが多額の源泉所得税を納付しなかったことから刑事訴追された事件で、大阪地裁(遠藤邦彦裁判長)は、社長の肩書きを持つ被告人が共同経営者として源泉徴収義務者となるか否かの判断が争われたが、被告人はいわゆる黒服従業員のトップとして経理等の業務に従事する幹部従業員にすぎず、ホステス等の請負、雇用契約の主体にも当たらないという判断から、源泉徴収義務者に該当しないと判示して検察側の主張を斥け、無罪判決を言い渡した。

 この事件は、高級クラブの経営者であると認定され、ホステス等への報酬に係る8000万円ほどの源泉所得税を納付しなかったとして罪に問われたもの。検察官側は、オーナーママが源泉徴収義務者であるものの、源泉所得税不納付に係る事実の認識及び認容に欠けるという判断から、被告人の単独正犯として起訴したという事件である。

 これに対して判決は、検察官の立証はママの源泉所得税の不納付犯という観点からの調査、捜査を十分にせず、被告人とママを比較対照する形で源泉徴収義務者の検討が十分にされなかったと指摘した上で、ママと長年二人三脚でクラブ経営に携わってきた被告人が源泉徴収義務者に該当するのか、つまりクラブ経営者なのか幹部従業員に過ぎないのか否かが争点になるとも指摘して無罪判決を言い渡した。

 そこで裁判官は、被告人の待遇はその金額や他の黒服従業員と同様に経費が個人負担となっていることからみても、黒服従業員と同系列のトップと評価できる待遇であり、ママの待遇と比べても5倍以上の開きがあると認定した上で、クラブの営業に大きな影響を与える高額報酬の幹部ホステスの採用権限等はなかったと考えるのが合理的とも認定。さらに、検察官調書が述べる共同経営は、裏方トップとしての責任という程度のイメージに過ぎないという判断から、経営者性の判断に関する証拠価値は低いと言わざるを得ないとして無罪を言い渡したわけだ。告発事件で、納税者側が無罪になる判決が相次ぎ、検察側の勇み足という指摘も聞かれる。

(2014.11.10大阪地裁判決、平成24年(わ)第356号)