生前贈与に調査の目
カテゴリ:05.相続・贈与税 トピック
作成日:03/13/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 子や孫へ贈与した場合の税率軽減、相続時清算課税制度の拡大、教育資金贈与の特例-。今年度の税制改正では生前贈与を後押しする減税策が出揃ったところだが、こうした中、贈与税調査の増加が予想されている。

 親から子へ資産を引き継ぐケースでは「黙っていれば分からない」などと思っている人も多いようだが、税務署はそんなに甘くない。とくに「土地などの不動産を贈与した場合は、登記が異動するため税務署に把握されやすい」(国税OB税理士)という。

 「登記所通いは新人調査官の日課」(同)というだけあって、登記所の情報は税務署に筒抜けだ。不動産そのものではなく、取得資金の贈与を受けて不動産を購入した場合も、登記所情報をもとに税務署から「おたずね文書」が送られてくる。収入と不釣合いな資産を購入した場合などは、贈与の事実がなかったか、資金出所を細かく追及されることになる。

 動産も油断はできない。贈与された現金で株やゴルフ会員権、宝石、絵画など大きな買い物をすればそこから足がつく。「株式なら証券会社からの売買証明、ゴルフ会員権ならゴルフ場の会員リストや仲介業者からの情報、宝石や絵画ならデパートや宝石商、画商の顧客リストなどの情報をもとに贈与の事実を把握できる」(同)。

 外国で暮らす子供に住宅資金を送る場合も同様。金融機関には、100万円以上の国外送金があった場合に「国外財産等調書」を作成して税務署に報告する義務がある。調書を受け取った税務署は、送金者や受領者に「国外送金等に関するお尋ね」を送付。回答に不明な点があったり回答自体がなかったりした場合は、調査対象に取り込まれることになる。

 本来、贈与税調査は相続税との同時調査となるケースが多く、単独で行われることは少ないが、「非課税枠拡大などによって贈与件数の増加が見込まれるなど特別な事情がある場合は話は別。また最近では、法定調書の整備などによってターゲットを絞りやすくなったことから贈与税の単独調査は増加傾向にある」(国税関係者)という。今回の改正を機に生前贈与を真剣に検討する動きがあるが、常に税務署に見られていることを意識して、適正申告を心がけたい。