4年で約3.7倍に増加した租税条約に基づく情報交換
カテゴリ:07.国際税務 トピック
作成日:11/28/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 企業や個人の海外取引や海外資産の保有・運用が増加するなか、国税庁では、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換を積極的に実施している。国税庁がこのほど公表した平成23年度(23年4月~24年3月)における租税条約等に基づく情報交換事績によると、同年度に国税庁から外国税務当局に発した「要請に基づく情報交換」の要請件数は1006件と、前年度の646件から大幅に増加した。

 4年前の平成19年度(271件)と比べると約3.7倍に増えている。地域別にみると、アジア・太平州の国・地域向けの要請が668件と、全体の約7割を占め、次いで米州が267件だった。他方、外務当局から国税庁に寄せられた要請件数も299件と、前年度の84件からの3倍超に増加した。23年度中の情報交換の相手先は、過去最多の51ヵ国・地域にのぼった。

 「要請に基づく情報交換」とは、個別の納税者に対する調査等において、国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合に、条約等締結相手国・地域の税務当局(外国税務当局)に必要な情報の収集・提供を要請するもので、海外法人等との取引の内容や、海外金融機関との取引の内容など、国際的な取引の実態や海外資産の保有・運用の状況を解明する有効な手段となっている。

 例えば、タックスヘイブン国に設立された海外子会社の実態が不明だったので、タックスヘイブン国に対しその海外子会社に関する登記情報、財務諸表等に関する情報提供を要請し、回答を受領したケースや、海外法人との輸出取引に係る債務残高が異常に高額だったことから、その海外法人の経理処理が分かる帳簿の写し、その取引に係る契約書、インボイス等の証拠書類の写しについて情報提供を要請し、回答を受領したケースなどがある。

 なお、国税庁から外国税務当局に提供した「自発的情報交換」は354件。地域別では、アジア・太平洋州向けが297件と全体の8割超を占める。他方、外国税務当局から国税庁に提供されたのは341件だった。また、国税庁から外国税務当局に提供した「自動的情報交換」は約37万5千件(前年度約16万6千件)と大幅増加。他方、外国税務当局から国税庁に提供されたのは約17万8千件(同約12万3千件)だった。

 平成23年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要はこちら