オバマ政権、タックスヘイブン国の取締りの強化
カテゴリ:07.国際税務 トピック
作成日:07/15/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 2009年5月4日、オバマ政権は税制改正案の概要を発表し、合法的に租税回避を可能とするスキームや富裕層による違法な隠し口座の温床となっている、タックスヘイブン国の利用による租税回避を削減することを明らかにした。このタックスヘイブン国の取締りの強化を解説するのは、KPMG税理士法人が発表した「オバマ政権による税制改正案(国際税務他)」と題したレポートである。

 レポートによると、オバマ政権は、現在富裕層の米国人は外国金融機関や外国政府が米国税務当局に報告する怖れをほとんど抱くことなく、国外口座に自己資金を蓄えることによって租税を回避することができていることや、租税回避目的で設立した実態のない会社に対する有利な税務上の取扱いが、米国納税者の米国における租税回避を容易にしていることを問題視しているという。

 オバマ政権は、まず、米国人口座に関する情報の隠ぺいによる租税回避を難しくするため、1)外国金融機関に適格仲介人(QI)になることを強制し、米国金融機関が対処するのと同様の顧客情報の提出を求める、2)国外口座を報告しない個人への罰則の強化、否定的な対応、時効成立の延長を課すことにより、国外投資に対して報告基準を厳しくする、といった開示及び執行を厳しくすることを考えている。

 一方、米国法人がタックスヘイブン国と他国にそれぞれ外国子会社を設立した場合、両子会社間で移転された所得は米国法人にとって非積極的所得とされ、合算課税の対象となるが、過去10年間にわたり、いわゆるチェックザボックス規則は、このような子会社を米国税務上独立した法人格のない事業体とみなすことにより、米国税務上、非積極的所得を合算課税せず、タックスヘイブン国に合法的に所得移転することを可能にしてきた。

 そこで、オバマ政権は、国外に投資する米国法人がその外国孫会社を米国税務上チェックザボックス規則により法人格のない事業体(つまり、支店)とみなすことがないように改正する考えだ。米国法人の直接保有の孫会社及び外国子会社と同一国にある孫会社に対しては、現行法どおりチェックザボックス規則の適用が可能とする。