太宰府市の「歴史と文化の環境税」を教訓とすべきもの
カテゴリ:16.その他 トピック
作成日:09/09/2003  提供元:21C・TFフォーラム



 環境庁が、地球温暖化防止のために、課徴金や負担金ではなく、社会システムの根幹である「税」を用いた環境税(温暖化対策税)を提案したことが、環境行政にとって意義深いものという指摘がある。一方で、地方においても環境を念頭においた法定外税が次々と打ち出されているが、そのひとつ太宰府市の「歴史と文化の環境税」がこう着状態に陥ったことを教訓にすべきだとは三菱総研・主任研究員の升本和彦氏の主張である。

 太宰府市の「歴史と文化の環境税」は、年間約650万人が参拝する大宰府天満宮周辺の渋滞緩和や観光施設整備を目的に、有料駐車場の駐車に課税するもの。課税額は普通車100円、大型車500円などで、法定外普通税として徴収され一般財源に繰り入れられた上で、基金を通じ観光施設整備等に用いるという。

 この環境税は、平成14年3月に条例案が可決され、同年10月に実施を目指したものの、代理徴収する駐車場業者の反対で延期されていたが、駐車容量の大半を占める大宰府天満宮が受け入れたことで今年5月に見切り発車的に実施された。しかし今夏、大宰府天満宮が再度拒否するに至ってこう着状態に陥ったというもの。

 こうした経緯に至った理由として、升本氏は、租税の転嫁と帰着の原則に照らして十分に詰められていなかったことや、見切り発車的な実施によって税を取る駐車場と納得せず取らない駐車場が混在するといった不公平性などを挙げているが、最大の問題は、関係主体への十分な説明と議論が不在だったためではないかとの指摘をしている。

 環境庁が提案している環境税は、導入に際し、その目的や使途・影響などについて専門家による数年間の議論の結果を、国民に対し言葉や数字できちんと説明するなど、環境税に関する議論を国民各界各層と深めようと取り組んでいる、と評価。全国各地で検討されている法定外税の検討に際しても、地域の主役である住民を含め、十分に議論を尽くし、関係者間の合意を形成する必要がある。このことを、太宰府市の事例を教訓として肝に命ずるべき、というのが升本氏の主張である。