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2022年の監査法人異動企業数は241社、前年比12.6%増

 東京商工リサーチが発表した「2022年全上場企業の監査法人異動調査」結果によると、 上場企業のうち、2022年(1~12月)に「監査法人異動」を開示したのは241社だった。前年の214社から27社(前年比12.6%増)増え、過去5年間で最多となった。監査法人の異動が増えた理由は、会社の事業規模に適した監査対応や監査費用の相当性などで、大手監査法人から中小監査法人に異動する企業が増えたことによる。

 異動理由別では、最多は「監査報酬」の102社(構成比42.3%)。経営環境の変化等に伴う監査工数の増加に伴う監査報酬の増額要請を契機に、事業規模に適した監査対応や監査報酬の妥当性を検討し、監査法人を変更する上場企業が増えた。以下、監査期間が長期間にわたったことなどを理由とする「監査期間」81社(同33.6%)、「会計監査人の辞任等」20社(同8.2%)、「親会社等監査法人の統一」15社(同6.2%)と続く。

 監査法人異動規模別では、「大手→中小」が106社(構成比43.9%)で最も多かった。次いで、「大手→準大手」が50社(同20.7%)、「中小→中小」が44社(同18.2%)と続く。2022年に退任した監査法人数が最も多かったのは、「有限責任あずさ監査法人」が66社、次いで「EY新日本有限責任監査法人」57社、「有限責任監査法人トーマツ」の43社で、大手3社が上位を占めた。

 産業別では、「サービス業」の70社(構成比29.0%)が最も多かった。次いで「製造業」と「運輸・情報通信業」が同数の56社(同23.2%)、「小売業」の25社(同10.3%)、「卸売業」の17社(同7.0%)、「不動産業」の8社(同3.3%)、「建設業」の6社(同2.4%)、「金融・保険業」の3社(同1.2%)だった。一方、「水産・農林・鉱業」と「電気・ガス業」、「運送業」では監査法人の異動はゼロだった。

 上場企業は、2013年の約3400社から2022年末で約3800社と、10年間で約400社増えている。監査法人は会計士の人数確保を迫られる一方、不適切会計が判明する上場企業が後を絶たず、より厳格な監査体制の確立が求められている。コロナ禍に加え、急激な物価高、人手不足などから業績悪化に陥り、不適切会計を行う企業が増えるリスクが高まっている。中小監査法人がどれだけ不適切会計を未然に防げるか、また毅然と指摘できるか、監査法人の動向もまた注目される。

「2022年全上場企業の監査法人異動調査」について

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 東京商工リサーチが発表した「2022年全上場企業の監査法人異動調査」結果によると、 上場企業のうち、2022年(1~12月)に「監査法人異動」を開示したのは241社だった。前年の214社から27社(前年比12.6%増)増え、過去5年間で最多となった。監査法人の異動が増えた理由は、会社の事業規模に適した監査対応や監査費用の相当性などで、大手監査法人から中小監査法人に異動する企業が増えたことによる。 異動理由別では、最多は「監査報酬」の102社(構成比42.3%)。経営環境の変化等に伴う監査工数の増加に伴う監査報酬の増額要請を契機に、事業規模に適した監査対応や監査報酬の妥当性を検討し、監査法人を変更する上場企業が増えた。以下、監査期間が長期間にわたったことなどを理由とする「監査期間」81社(同33.6%)、「会計監査人の辞任等」20社(同8.2%)、「親会社等監査法人の統一」15社(同6.2%)と続く。 監査法人異動規模別では、「大手→中小」が106社(構成比43.9%)で最も多かった。次いで、「大手→準大手」が50社(同20.7%)、「中小→中小」が44社(同18.2%)と続く。2022年に退任した監査法人数が最も多かったのは、「有限責任あずさ監査法人」が66社、次いで「EY新日本有限責任監査法人」57社、「有限責任監査法人トーマツ」の43社で、大手3社が上位を占めた。 産業別では、「サービス業」の70社(構成比29.0%)が最も多かった。次いで「製造業」と「運輸・情報通信業」が同数の56社(同23.2%)、「小売業」の25社(同10.3%)、「卸売業」の17社(同7.0%)、「不動産業」の8社(同3.3%)、「建設業」の6社(同2.4%)、「金融・保険業」の3社(同1.2%)だった。一方、「水産・農林・鉱業」と「電気・ガス業」、「運送業」では監査法人の異動はゼロだった。 上場企業は、2013年の約3400社から2022年末で約3800社と、10年間で約400社増えている。監査法人は会計士の人数確保を迫られる一方、不適切会計が判明する上場企業が後を絶たず、より厳格な監査体制の確立が求められている。コロナ禍に加え、急激な物価高、人手不足などから業績悪化に陥り、不適切会計を行う企業が増えるリスクが高まっている。中小監査法人がどれだけ不適切会計を未然に防げるか、また毅然と指摘できるか、監査法人の動向もまた注目される。
2023.02.28 16:08:05