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路線価だけに頼らない適切な価格算定方法の検討を

 三菱UFJ信託銀行が発表したレポート「不動産FLASH」によると、2022年1月1日時点の相続税路線価が公表され、全国平均で前年比プラス0.5%となり、2年ぶりに上昇に転じた。路線価は、行政機関が定期的に公表する公的土地価格の一つであり、全国の民有地について、国税庁が年に一度、7月に公表。路線価は、1年間の地価変動や土地の個別的要因などを考慮し、地価公示価格の80%を目安に設定されている。

 路線価に基づき不動産の価格を算出することは可能だが、必ずしも実際の取引価格(その時点の不動産の真価)と同水準になるとは限らないことに留意が必要だ。なぜなら不動産の価格は、物件固有の事情のほか、その時々のマーケット状況や売買当事者の事情等を受けて形成されるものであり、毎年の1月1日時点に限られた価格である路線価とは異なり、不確定なものだからである。

 実務上、路線価を企業不動産の価格の把握に活用している企業は多いと思われる。しかし一方で、路線価と取引価格(不動産の真価)の乖離が見られる場合もあり、留意が必要となる。保有物件の全てについて、日頃から精緻に価格を把握しておく必要はないものの、路線価に基づく価格査定で足りる物件と、それでは不十分な物件とを区別し、物件に応じた適切な価格査定を行うことが必要ではないだろうか。

 それは、物件の「個別事情」や「重要性」に応じた区別だ。対象物件の存する地域によっては、取引価格に対し路線価が大きく遅行している場合がある。さらに、そもそも不動産は個別性が高いため、対象物件の画地条件等に応じ、適切な補修正が必要になる場合もある。また、資産規模が大きい場合や、売却の可能性がある場合等、重要性が高い物件については、定期的に正確な価格査定をしておくことが肝要となる。

 以上のことから、路線価だけに頼らない、保有物件に応じた適切な査定方法の検討が求められるようだ。企業不動産の価格を適切に把握することで含み損益を明らかにし、財務状況の透明化を図ることは、情報開示の深化を図るうえでも重要なことだ。レポートは、「保有物件の事情や重要性によっては、不動産の専門家の活用などの検討も必要だろう」とコメントしている。

「不動産FLASH」について

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 三菱UFJ信託銀行が発表したレポート「不動産FLASH」によると、2022年1月1日時点の相続税路線価が公表され、全国平均で前年比プラス0.5%となり、2年ぶりに上昇に転じた。路線価は、行政機関が定期的に公表する公的土地価格の一つであり、全国の民有地について、国税庁が年に一度、7月に公表。路線価は、1年間の地価変動や土地の個別的要因などを考慮し、地価公示価格の80%を目安に設定されている。 路線価に基づき不動産の価格を算出することは可能だが、必ずしも実際の取引価格(その時点の不動産の真価)と同水準になるとは限らないことに留意が必要だ。なぜなら不動産の価格は、物件固有の事情のほか、その時々のマーケット状況や売買当事者の事情等を受けて形成されるものであり、毎年の1月1日時点に限られた価格である路線価とは異なり、不確定なものだからである。 実務上、路線価を企業不動産の価格の把握に活用している企業は多いと思われる。しかし一方で、路線価と取引価格(不動産の真価)の乖離が見られる場合もあり、留意が必要となる。保有物件の全てについて、日頃から精緻に価格を把握しておく必要はないものの、路線価に基づく価格査定で足りる物件と、それでは不十分な物件とを区別し、物件に応じた適切な価格査定を行うことが必要ではないだろうか。 それは、物件の「個別事情」や「重要性」に応じた区別だ。対象物件の存する地域によっては、取引価格に対し路線価が大きく遅行している場合がある。さらに、そもそも不動産は個別性が高いため、対象物件の画地条件等に応じ、適切な補修正が必要になる場合もある。また、資産規模が大きい場合や、売却の可能性がある場合等、重要性が高い物件については、定期的に正確な価格査定をしておくことが肝要となる。 以上のことから、路線価だけに頼らない、保有物件に応じた適切な査定方法の検討が求められるようだ。企業不動産の価格を適切に把握することで含み損益を明らかにし、財務状況の透明化を図ることは、情報開示の深化を図るうえでも重要なことだ。レポートは、「保有物件の事情や重要性によっては、不動産の専門家の活用などの検討も必要だろう」とコメントしている。
2022.07.05 16:10:05