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経営者保証ガイドライン、「顧客との信頼関係の強化」に効果

 金融庁では、担保・保証に過度に依存しない融資の促進の取組みの一つとして、2014年4月からスタートした「経営者保証に関するガイドライン」が融資慣行として浸透・定着するよう、金融機関に対してガイドラインの活用を促してきたところだが、このほど、地域銀行105行を対象に昨年11月に実施した「地域銀行に対する『経営者保証に関するガイドライン』のアンケート調査」結果を公表した。

 調査結果によると、ガイドラインの活用促進により、74%が「顧客との信頼関係の強化につながった」、53%が「職員の目利き力の向上につながった」と回答しており、一定の成果がみられたとしている。一方で、「貸出金利の上乗せにつながった」との回答は3%にとどまり、地銀経営への改善効果はまだ小さい。ただ、「純新規先との融資取引開始につながった」との回答が32%あり、融資取引の拡大につながる可能性があることがうかがえる。

 一方、銀行が長年にわたり経営者保証を求めてきた背景には、「経営者の規律低下の防止」と「債権保全」の観点があるが、ガイドラインの利用促進が与えるデメリットとして、52%が「経営者の規律付けの低下につながる」と回答。また、貸出債権に対する経営者保証からの回収率は63%(回答32行)が「1%未満」にとどまっており、利益向上には必ずしもつながっていないことがうかがえる。

 事業承継時における、経営者保証の二重徴求(新・旧経営者の両方から保証を徴求している状態)において、旧経営者の保証を解除していない要因については、「旧経営者が代表権を持っている又は株式を一定程度保有しているため」が91%、「旧経営者の経営関与が弱いものの、実質的な経営権を持っているため」が83%となり、銀行は、代表権の変更だけでなく、実質的な経営への関与度合いで保証を求めている実態が明らかになった。

 なお、2020年4月の民法改正の施行により、第三者保証の利用が制限されるが、これに備えて、経営に関与していない旧経営者からの保証徴求を避けるための対策に関しては、「まだ検討が進んでいない」とする地域銀行が56%と5割以上となっている。一方で、対策を進めている地域銀行では、「明確な保証徴求基準の明確化」(59%)や「旧経営者の保証は原則解除」(48%)など、具体的な対応が取られつつあることが分かった。

地域銀行に対する「経営者保証に関するガイドライン」のアンケート調査の結果について

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 金融庁では、担保・保証に過度に依存しない融資の促進の取組みの一つとして、2014年4月からスタートした「経営者保証に関するガイドライン」が融資慣行として浸透・定着するよう、金融機関に対してガイドラインの活用を促してきたところだが、このほど、地域銀行105行を対象に昨年11月に実施した「地域銀行に対する『経営者保証に関するガイドライン』のアンケート調査」結果を公表した。 調査結果によると、ガイドラインの活用促進により、74%が「顧客との信頼関係の強化につながった」、53%が「職員の目利き力の向上につながった」と回答しており、一定の成果がみられたとしている。一方で、「貸出金利の上乗せにつながった」との回答は3%にとどまり、地銀経営への改善効果はまだ小さい。ただ、「純新規先との融資取引開始につながった」との回答が32%あり、融資取引の拡大につながる可能性があることがうかがえる。 一方、銀行が長年にわたり経営者保証を求めてきた背景には、「経営者の規律低下の防止」と「債権保全」の観点があるが、ガイドラインの利用促進が与えるデメリットとして、52%が「経営者の規律付けの低下につながる」と回答。また、貸出債権に対する経営者保証からの回収率は63%(回答32行)が「1%未満」にとどまっており、利益向上には必ずしもつながっていないことがうかがえる。 事業承継時における、経営者保証の二重徴求(新・旧経営者の両方から保証を徴求している状態)において、旧経営者の保証を解除していない要因については、「旧経営者が代表権を持っている又は株式を一定程度保有しているため」が91%、「旧経営者の経営関与が弱いものの、実質的な経営権を持っているため」が83%となり、銀行は、代表権の変更だけでなく、実質的な経営への関与度合いで保証を求めている実態が明らかになった。 なお、2020年4月の民法改正の施行により、第三者保証の利用が制限されるが、これに備えて、経営に関与していない旧経営者からの保証徴求を避けるための対策に関しては、「まだ検討が進んでいない」とする地域銀行が56%と5割以上となっている。一方で、対策を進めている地域銀行では、「明確な保証徴求基準の明確化」(59%)や「旧経営者の保証は原則解除」(48%)など、具体的な対応が取られつつあることが分かった。
2019.04.16 16:22:15