最近の査察の状況~平成25年度査察の概要より
   
作成日:07/11/2014
提供元:マネーコンシェルジュ税理士法人
  


■平成25年度の査察概要

平成26年6月に、国税庁より毎年恒例の「平成25年度査察の概要」が発表されました。

それによると、平成25年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額で145億円で、そのうち検察庁への告発分は117億円でした。

告発事案1件当たりの脱税額は9,900万円。
告発事案のうち、脱税額が3億円以上のものは4件、うち5億円以上のものは2件。

いずれも昨年より減少しています。

前回までに5回シリーズでお伝えした、税務調査手続き面での改正が影響しているのかもしれません。

つまり、この数字だけをみて、今後税務調査の手が弱まるとは考えないほうがいいです。
むしろ最近の国税庁の動きをみていると、脱税事案を中心として更なる税務調査強化の様子がうかがえます。

真面目な納税者が報われる社会が重要だと思いますので、その方向には変わりがないとご理解ください。


■査察事案の3年推移

平成25年度に告発した査察事案で多かった業種・取引は、「クラブ・バー」や「不動産業」でしたが、最近3年間の推移が以下となります。

「査察事案で多かった業種トップ3」

平成23年
1位 建設業
2位 商品・株式取引
2位 人材派遣業

平成24年
1位 情報提供サービス業
1位 クラブ・バー
3位 建設業

平成25年
1位 クラブ・バー
2位 不動産業
3位 建設業
3位 情報提供サービス業
3位 保険業


■脱税の手段や方法は?

告発の多かった業種における脱税の手段・方法として、



クラブ・バーではホステス報酬に係る源泉所得税について徴収していたにもかかわらず納めていなかったもの
 


不動産業では不動産販売に係る売上と仕入の両方を除外する方法で取引そのものを隠していたもの
 


建設業では関係会社に対して架空の外注費を計上していたもの
 


情報提供サービスでは所得を一切申告していなかったもの
 


保険業では架空の接待交際費を計上していたもの
 

などが見られました。


■相続税や消費税、国際事案の脱税

一方、個人の相続税事案では、相続財産の一部が相続人名義で預金されていたことを奇貨としてその預金を相続財産から除外していたものなどがありました。

また、消費税事案では、



顧客から受領した飲食代金に係る消費税について、申告書を一切提出せず不正に納付を免れていたもの
 


基準準期間の事業主体を偽ることで納税義務がないものと仮装し、事業に係る消費税について、申告書を一切提出せず不正に免れていたもの
 


課税売上となる建物の売却収入を非課税売上となる土地の売却収入に仮装していたもの
 


居住用賃貸マンションの購入に係る消費税について、実際には課税売上がないため仕入税額控除を受けることができないにもかかわらず、架空の課税売上を計上し課税売上割合を高める方法で仕入税額控除を適用させ、不正に還付を受けていたもの
 


輸出免税売上に対応する課税仕入の消費税が還付になることを奇貨として、架空の輸出免税売上とこれに見合う架空課税仕入を計上する方法で、不正に還付を受けていたもの
 

などがありました。

最後に、国際事案では、



海外の取引先と通謀して仕入代金を水増しして送金し、水増し分をバックさせていたもの
 

などがありました。

脱税ではなく、合法的な税負担軽減策に力を入れましょう。