出国税を検討中!-後半
   
作成日:11/21/2014
提供元:マネーコンシェルジュ税理士法人
  


前回からの続きとなります。

■他の先進諸国では既に導入済み

前回、出国税についての新聞報道をお伝えしましたが、実は続きがあります。

日経新聞2014.10.22

「政府・与党、15年度実施へ検討

(前段省略、「出国税を検討中!-前半」参照)

フランスやドイツ、カナダなどはすでに出国時に課税する仕組みを導入している。

日本は金融資産1億円超を対象にする方向で検討を進める。

転勤などで海外に一時的に住み、日本に戻る人には課税しない。
日本に戻る予定の人は納税の猶予を申告し、国が定めた期間内に株式を売却せずに戻れば課税を免除する。
期間内に戻らない場合などは移住先の国の当局を通じて日本政府が税を徴収する。
 

出国税(Exit Tax)を導入している具体的な国は、下記となります。

オーストラリア、オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、ノルウェー、オランダ、スペイン、スウェーデン、英国、米国


■国外証券移管等調書制度が平成27年1月スタート

一方、平成26年度税制改正において、「適正・公平な課税を実現する観点から、国境を越えて有価証券の証券口座間の移管を行った場合に調書の提出を義務付ける『国外証券移管等調書制度』が創設」されました。

平成26年10月に下記のチラシもインターネット配布されました。
『国外証券移管等調書制度』のあらまし

非居住者のまま日本証券口座を使って株式の売買は通常行えないと思いますので、国外証券口座への移管を検討されるでしょうが、その動きを調書で把握しておこうという動きかと思われます。

もしですが、出国税が導入された場合には、この調書制度で課税漏れを防げることになります。


■M&A売却前に非居住者になる、は有り?

最後に余談ですが、非上場の同族オーナー企業が、後継者不在で、他社(他者)にM&Aで会社を売却するようなケースを考えてみます。

例えば、資本金1,000万円の非上場同族オーナー企業の会社価値が3億円であったとして、そのまま日本居住者の立場で売却したとすると、

(3億円-1,000万円)×20%=約5,800万円の課税

これが、M&A売却を機に妻と二人でゆっくりインドネシアのバリ島に1年以上の予定で居住となれば、家1軒分である約5,800万円の税金を払わなくて済む、のでしょうか?

M&A前に日本の非居住者扱いとなる必要がありますが、これほど大幅な節税が可能であれば、いいですよね?

でも実は、これには下記の(2)により、「25%以上の支配がある場合は日本で課税」となりますので、残念ながら実行不可ですのでご留意くださいませ。
 ↓
「海外転勤中に株式を譲渡した場合」
給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。
非居住者の場合、日本で課税を受けるのは国内源泉所得のみとされています。
また、非居住者に対する課税は、日本国内に恒久的施設を有するか否かでその方法が異なります。
給与所得者が海外出向中であれば、一般的には恒久的施設を有しない非居住者に該当します。
恒久的施設を有しない非居住者が株式等を譲渡した場合、次の(1)~(6)のいずれかに該当する所得が国内源泉所得として課税対象となります。
このうち、(1)~(5)に該当するものについては15%の税率により申告分離課税となり、(6)に該当するものについては総合課税の対象となります。
なお、これらに該当する場合は確定申告が必要です。


(1)

内国法人の株券等の買集めをし、これをその内国法人等に対し譲渡することによる所得

(2)

内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行う、その内国法人の株式等の譲渡による所得

(3)

税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得

(4)

特定の不動産関連法人の株式の譲渡による所得

(5)

日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得

(6)

日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得
 

なお、これらに該当する場合であっても、租税条約により日本で課税されないことがあります。

国税庁