海外取引法人に対する税務調査結果
   
作成日:12/01/2014
提供元:マネーコンシェルジュ税理士法人
  


■海外不正多し

平成26年11月に、国税庁より「平成25事務年度-法人税等の調査事績の概要」が公表されました。

事務年度とは税務署が定める年度のことで、7月1日から翌年6月30日の期間を指しますので、平成25事務年度とは平成25年7月から平成26年6月ということになります。

今回は、その中から「海外取引法人等に対する取組」を見ていくこととします。

まずは、法人税関係の資料から一部抜粋します。

企業等の事業、投資活動のグローバル化が進展する中で、海外取引を行っている法人の中には、海外の取引先からの売上を除外するなどの不正計算を行うものが見受けられます。

このような海外取引法人等に対しては、租税条約等に基づく情報交換制度を積極的に活用するなど、深度ある調査に取り組んでいます。
 

以前は、海外を使えばバレない(?)だろうなどと言われていたこともありましたが、現在では、上記にもあるように、他国との「租税条約等に基づく情報交換制度」などから、大変バレやすくなっていますので、ご注意下さい。

当然ですが、バレるバレないではなく適正な申告と納税をお願いします!


■海外取引法人等に対する調査結果(法人税)

では、実際どれくらいの税金の不正がおこなわれているのかというと、下記となります。

平成25事務年度においては、海外取引法人等に対する調査を約1万2千件(前年対比98.2%)実施し、このうち、海外取引等に係る非違があった件数は、約3千件(同102.1%)、申告漏れ所得金額は1,783億円(同72.7%)となりました。
 

平成24年からの「国税通則法」改正の影響で、昨年より調査件数等が減少傾向にありますが、そんな中でも非違件数は増えています。

一方、海外取引の会社の修正割合である非違割合は、平成24年26.5%、平成25年27.55%と依然としてそれほど高くはありません。

実際、弊社の顧問先で若干の海外取引を行っている会社に、税務調査が入ったのですが、とにかくあれやこれやと海外取引がらみの資料を要求されました。

結果は、海外取引における修正項目はなかったのですが、とにかく海外取引があれば、徹底的に調べるという税務署の方針のようなものを感じました。

皆さんの会社でも、「なぜ当社に税務調査?」と思われた時には、海外取引を最近始めたなどがないか確認されると、調査理由がわかって安心できるかもしれません。


■海外取引法人等に対する調査結果(源泉所得税等)

経済の国際化に伴い、企業や個人による国境を越えた経済活動が複雑・多様化する中、国税庁では、非居住者や外国法人に対する支払(非居住者等所得)について、源泉所得税等の観点から、重点的かつ深度ある調査を実施しています。

こうした中で、租税条約による源泉徴収の免税の適用を受けられない者であるにもかかわらず、租税条約に関する届出書を提出し、免税の適用を受けていた事例などが見受けられました。

平成25事務年度の調査においては、給与等や特許権の使用料などについて源泉所得税等の課税漏れを1,317件(前年対比102.0%)把握し、30億円(同69.5%)を追徴課税しました。
 

非居住者や外国法人との取引で、特に間違いやすいのが、大家が非居住者や外国法人でその大家に事務所家賃を支払う場合です。

この場合にも、下記より源泉所得税20.42%を、家賃を支払う側が天引きしなければなりません。

もちろんその天引き分の税金は、国に納税することになります。

ご存知の無い方は覚えておいて下さいね。

ちなみに、この非居住者には国籍日本人である海外駐在員等も含みますが、個人が居住用の家賃を非居住者に支払う場合は対象外となります。

国税庁

非居住者や外国法人(以下「非居住者等」といいます)から日本国内にある不動産を賃借して、日本国内で賃貸料を支払う者は、非居住者等に対して賃貸料を支払う際に、20.42%の税率で、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。

(中略)

なお、個人の方が自己又はその親族の居住の用に供するために、非居住者等から不動産を借り受けている場合には、その個人の方は、支払の際源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

国税庁