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出国税を検討中!-前半
作成日:11/11/2014
提供元:マネーコンシェルジュ税理士法人
■消費税を増税するためのアピール?
新聞を読んでいると、「富裕層の税逃れ対策?」や「出国時に課税する?」等、何やら意味深な言葉が目の前に飛び込んできました。
日経新聞2014.10.22
「富裕層の税逃れ防げ、海外移住者の株含み益に課税」
政府・与党、15年度実施へ検討
政府・与党は21日、富裕層の税逃れ対策を強化する検討に入った。
1億円を超える金融資産を持つ富裕層が海外に移住する場合は株式などの含み益に所得税を課税する。
仏独などがすでに導入している仕組みで、日本では年間100人程度が対象になる見通しだ。
2015年度からの実施を目指す。
21日の政府税制調査会で財務省が方針を説明した。
与党内からは「対策を急がないといけない」(自民党税調幹部)との声が出ている。
与党の税制調査会が12月にまとめる15年度の税制改正大綱に盛り込みたい考えだ。
(中略)
低所得者ほど負担感が強いといわれる消費税の再増税の判断を前に、富裕層の節税策を封じて、公平性をアピールする狙いもありそうだ。 |
■シンガポール転勤中の株式売却益は非課税
日本居住者が、例えば、上場株式を売却して利益を得れば、その「株式売却代金-株式購入代金-株式売却手数料=売却益」に対して、約20%の税金がかかります。
同じような取引を、シンガポール転勤(1年以上の予定)になってから海外で行えば、シンガポールでも日本でも税金がかからないことになります。
その理由は、「租税条約上、株式等のキャピタルゲインについては株式等を売却した者が居住している国に課税権がある」とされているからです。
つまり、この株式売却益に対しては日本に徴税権がなく、徴税権があるのがシンガポールで、そのシンガポールはキャピタルゲインに対しては非課税となっているからなのです。
ちなみに、キャピタルゲイン非課税国は、他にも、「香港、ニュージーランド、スイス」があります。
■キャピタルゲイン非課税国への永住者数の推移
このいわゆる「出国税」が新聞報道に出たソースは、財務省の「内閣府第5回基礎問題小委員会(2014年10月21日)」で提出された「BEPS行動計画に関連する検討課題(所得税関連)」です。
この資料で、「キャピタルゲイン非課税国への永住者数の推移」というのがあり、上記のキャピタルゲイン非課税国に日本人が行って、日本の非居住者となった人数が、平成8年からの推移として掲載されています。
平成8年と比較すると、上記4ケ国ともに、約2倍以上の増加となっています。
ただし、冒頭の新聞報道にもあるように、株式売却益課税逃れとなっている方は、このうち年間100人程度のようです。
1件当たりの税額はそれなりに大きいでしょうが、例えば、平均10億円の売却益が年間100人として、10億円×20%×100人=200億円ですから、日本国の財政規模からすると、スズメの涙程度です(だからどうでもいいなんてことは言っていませんので悪しからず)。
つまり、税収目的の課税ではなく、税の公平性を維持するための課税といえそうです。
そろそろ消費税を8%から10%に上げるアナウンスをしなくてはいけない政府(財務省)にとっては、消費税増税の地ならし的な、アピール的な側面もあるのではないかと思います。
次回に続きます。
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