銀行の不良債権処理をにらんだ公的資金注入
   
カテゴリ:法務
作成日:04/16/2002
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 昼休みのひととき会計事務所担当者の黒田さんと旭課長が雑談しています。どうも、新聞記事が題材になっているようですが、リエちゃんが聞き耳をたてています。

黒田
「みずほ銀行が、さまざまなトラブルをおこしていますが、経営はだいじょうぶなんでしょうか。」

旭課長
「う~ん。ペイオフが始まったばかりだし、みずほ銀行が仮に破綻したときの影響を考えると、政府もいろいろと対応すると思うんだけどね。」

黒田
「自動送金の遅れや二重引き落としの問題なんて、中小企業の経営にもろに影響すると思うんです。責任問題はたいへんですが、破綻の影響を考えると、以前あったように公的資金を注入するんですかね。」

旭課長
「公的資金注入の問題については、さまざまな問題が内在していると思う。たとえば、リエちゃん、政府が勝手に我々の税金をつぎ込むことに憤りを感じないかい。」


リエ
「はい、以前に金融機関に資金がつぎ込まれたときに、その直前、頭取などの役員が何億もの退職金をもらったという新聞記事をみて『ふざけるな』と思いました。」


旭課長
「ははは、『ふざけるな』か、そうだね、それが、我々庶民の正直な感覚だろうね。まず、政府が1私企業の経営に介入することはどうだろう。そして、政府の決議がないと、つまり立法がされないとこのようなことは起きないんだけど、これを決めた国会議員の対応はどうなんだろうか。」

黒田
「ちょっと、大きな視点ですね。憲法的な発想からは、ということですか。」

旭課長
「うん、つまり憲法の立法趣旨から考えると、災害や福祉の問題などを除いて、国家は、国民の行為(銀行の行為)に原則介入しないということになっているし、国会議員も、国民の民意を反映し、その民意を統合することが期待されているわけだから、国民の血税である公的資金を1私企業に注入することは、場合によっては憲法に違反するということになりかねない。」

リエ
「ふ~ん。なるほど、じゃあ、頭取に払われた退職金はどうなんですか。」

旭課長
「これは、憲法というところからちょっと離れるけど、株主総会の承認を受けているはずだから、法的に問題がないとすると、取り戻そうとするならば、債権者や株主が不当利得返還請求か代表訴訟で対応するしかないだろうな。でも、この問題は、監査役や外部の公認会計士の監査の法的責任につながる話かもしれないね。」



リエ
「旭課長、すごーい。まるで、弁護士さんみたい。」

旭課長
「おおー。はは、じ、じつはこれ赤井弁護士の受け売りなんだよ。」