「中小企業の会計に関する指針」って何?
   
カテゴリ:法務
作成日:06/06/2006
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 会計事務所の黒田さんが、「中小企業の会計に関する指針」について説明をしています。

黒田
「今回の会社法において、第431条で『株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする』とされました。」


リエ
「はい、名前は聞いたことがあるのですが、これはうちの会社でもこの方針に基づいた会計でやっていかなければいけないんですか?」

 

黒田
「この指針は、中小企業が計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すもので、とりわけ会計参与設置会社が計算書類を作成する場合には、この指針によることが適当であるとされています。なので、必ずしなければならないということではありませんが、対外的な印象などを考えますとこの指針に基づいた処理をすることが望ましいでしょうね。」

 
リエ
「そうなんですか。ところで、この指針についてよく知らないのですが、どのようなところが変わっていくんですか?」


黒田
「実は、そんなに極端に変更するところはないですよ。御社の場合きちんと日々の取引についても適性に処理されていますし、監査をしていても訂正箇所などはほとんど見受けられません。ただ、今までは法人税申告ありきでの決算を組んでいた部分が大きかったので、その部分にていてはいくつかの変更箇所が出てきます。」


リエ
「法人税ありきの決算といいますと、具体的にはどのようなところですか?」


黒田
「例えば、御社の例とは少し離れますが、減価償却費の計上について、税法の基準では償却限度額までであれば任意償却して良いことになっています。結局このような場合、会計上でもその任意で計上した償却費の分だけを処理することが多かったのですが、これはこの指針では認められません。その他、各種引当金の処理についても、同様のことがあります。」


リエ
「引当金というと、貸倒引当金や賞与引当金等のことですか?」


黒田
「そうです。貸倒引当金でいうと、きちんと一般債権、貸倒懸念債権等に区分をし、それに基づいた引当金を計上しなければいけないのですが、税法基準では任意ですので、あえて計上しないというケースも見受けられます。賞与引当金や退職給与引当金についても、税法基準では現在廃止されているので計上していませんが、会計上では計上しなければいけません。」

 


リエ
「そうなんですか。つまり、税法基準に基づいただけでの決算処理では、その会社の本来の数字が見えづらいということなんでしょうかね?」
 
黒田
「確かにそう言えますね。とても財務状態がよく見えている会社が、この指針に拠って処理をした場合、債務超過だったということももちろんあると思います。こういった場合、銀行側としては貸し出すことにリスクが大きくなるので、それを未然に防ぐという意味でも、この指針に基づいた処理をすることに意義があると思います。」

リエ
「なるほど、わかりました。どこに出しても恥ずかしくない決算書になるように頑張らないといけないですね。」