金庫株解禁について
   
カテゴリ:法務
作成日:12/24/2002
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 旭課長と赤井弁護士が立ち話をしています。赤井弁護士は、社長との打ち合わせにおいでになったようですが、要件は済んだようです。なにやら「金庫株」などという用語が聞こえてきますが………。
 

旭課長
「赤井先生、先日、新聞で『金庫株の解禁』の特集がありましたが、われわれ中小企業にはあまり関係なさそうですね。」

 
赤井弁護士
「いや、そうでもないんですよ。いままでは、制約が多すぎて、ほとんど大会社しか使えなかったということがあります。逆に、今回の改正で、原則、取得も保有も処分も自由になったため、これからは中小企業もどんどん活用すべきなんですよ。」    

旭課長
「ところで、『金庫株』という用語を使っていますが、『自己株式』というのが正式な名称なのですか。」

赤井弁護士
「そうですね。自分の会社が発行した株式を自分で所有するわけですから、一般的に『自己株式』とか『自社株』という表現が使われますね。金庫株というのは、金庫に入れて自由に使えるというアメリカ流の表現です。ついでに、お話ししますと、自分で自分の会社の株式を持つことから、資本の空洞化につながり(減資と同じ)債権者の利害を害するとか、株価操作に使われるとかの批判があって、償却目的、ストック・オプションのため、譲渡制限会社の相続の際の取得などの場合だけに認められていたものなのですね。」

リエ
「それがなぜ、全面的に認められたのですか。」
 


赤井弁護士
「おお、リエちゃん、聞いていたの。そうだね、今回の改正(平成13年6月公布、10月施行)では、資本維持の観点から取得財源規制をおき、取得を原則として市場取引や公開買付による方法にしていることや、インサイダー取引を防ぐために証券取引法上の手当をしているんだ。だから、解禁に踏み切れたんだよ。」
 
旭課長
「中小企業に使えるというのはどういう場面ですか。」

赤井弁護士
「そうですね。例えば、相続などで分散した株式を、会社が買い取って議決権行使の不穏な動きを封じ込めたり、オーナー社長から株式を買い取り、相続対策資金を用意させたりすることが可能になりますね。」

旭課長
「その際の注意点ってどのようなものがありますか。」

赤井弁護士
「うん、譲渡制限がある株式については、市場では買えないから、相対取引となり、株主総会の特別決議が必要になります。あと、中小企業では、資本準備金や利益準備金が極端に少ないことが多いから、財源規制に注意することや取締役の損害賠償責任も想定して、財務数値の異動に注意を払うことかなあ。あと、税務上の取扱いも結構複雑になるようだから、伊豆野先生によく相談して下さい。」
 

リエ
「じゃあ、早速、伊豆野先生に相談してみようっと。それと、黒田さんにも、巡回監査をしっかりやってもらって、アドバイスをもらわなくっちゃ。」