どうなる民事再生法を申し立てた得意先に対する債権
   
カテゴリ:法務
作成日:09/24/2002
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


田中社長と旭課長がなにやら真剣な顔つきで話し合っています。工場長の亀井さんも呼ばれました。ちょっと物々しい雰囲気です。

田中社長
「旭課長、得意先の雪印スーパーが民事再生法の申し立てをしたらしい。うちの債権の状況はどうなっているんだ。」

旭課長
「受取手形が1枚あります。期日は1ヵ月先で、額面が200万円です。その他に、売掛金が150万円あります。」

田中社長
「雪印スーパーには、主に、売出しのチラシを頼まれていたはずだ。駅前の店の店長は、前回の売出しでは、予想以上に好調だと言っていたのに。工場長の亀井君は、店長と親しくしていたはずだが、情報はないのか。」

亀井工場長
「はい、店長も寝耳に水だといっています。多くの従業員も知らなかったようです。でも、2年前から、近所に大手のスーパーができて苦戦しているとは言っていたんですが……。」

田中社長
「う~ん。旭課長、弁護士の赤井先生に連絡をとって、至急、善後策を相談してくれ。」

リエ
「旭課長、今、赤井先生と電話でつながりました。お話ください。」

旭課長
「おお、リエちゃんありがとう。赤井先生ご無沙汰しています。実は、取引先が民事再生法の申し立てをしたらしいんです。先方に対して手形債権が200万円、売掛債権が150万円あるんです。善後策をご支持願いたいのですが。」

赤井先生
「旭課長、もう少し状況を教えてください。まず、その会社の名前と、本店所在地を教えてください。そうですか、名前は、雪印スーパーで東京に本店があるんですね。それじゃあ、後ほど、東京地裁に連絡して、申し立ての状況を確認してみましょう。
まず、慌てないで、落ち着いて行動して下さい。もし、債務者が申し立てをして、予納金を収めている状況であれば、債務者はどんな債権者にも支払えない状況、すなわち財産が保全されているはずですから、慌てなくても大丈夫です。手形債権200万円と売掛債権150万円は、裁判所から、債権届出期間の通知がありますから、その期間に遅れずに届出をして下さい。破産の場合には最後の配当の除斥期間までに届ければいいのと違って、この期間をすぎると権利を失うことになりかねません。」

旭課長
「権利というのはどういうことでしょう。」

赤井先生
「再建計画に記載された弁済債権をいいます。当社から見れば、いわゆる債権放棄をしたあとの実際に弁済を受けられる債権をいうんです。当初債権の何割が弁済を受けられるか
実際の再生計画が認可されるまでは、はっきりわからないのですが……。」

旭課長
「でも、債権がまったくの無価値になるわけではないし、今後も取引が継続できることを考えると、この民事再生法は有難い。」

赤井先生
「そうです。確かに、一時的には厳しいですが、長い目で見れば、当社にとってもメリットはあるはずです。でも、裁判所の審査で破産に追い込まれたり、債権者集会で再生計画が可決されなければ再生は難しくなります。」

旭課長
「まず手続き面をしっかりしましょう。赤井先生、ありがとうございました。資料をそろえて、近々お邪魔します。」