会社の解散の手続き
   
カテゴリ:法務
作成日:06/12/2007
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


社長
「黒田さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな。」

黒田
「はい、伺います。」
 

社長
「会社の解散のことを簡単に教えて欲しいんですよ。もちろんウチの会社のことじゃなくて、知り合いの社長が、後継者がいないので会社を解散するって言ってたんだけど、私もちょっと興味があって。」

 
黒田
「なるほど、会社の解散というのは最終的には法務局に『この会社は解散して、法的に存在しなくなりました』という登記をして、残った財産を株主に分配して完了となりますが、そこに至るまでの流れを簡単に申し上げます。ちなみに会社の解散には、株主総会の決議等による任意解散と、会社の破産等による強制解散とがありますが、ここでは株主総会の決議による任意解散についてでよろしいですか?」

社長
「そうですね、お願いします。」

黒田
「まず、株主総会で会社が解散する旨の決議をします。この決議には原則として議決権の過半数を有する株主が出席し、さらに3分の2以上の賛成があって初めて解散が認められることとなります。」

社長
「通常の決議事項よりもより多くの賛成者が必要ということですね。」

黒田
「はい、おっしゃるとおりです。その後会社は『清算』という作業にとりかかります。清算というのは、細かいことを言えば多岐にわたりますが、主たる目的は会社が所有する債権の取立、財産の換金、債務の弁済を行い、その後最終的に残った財産を株主に分配することです。そして、この清算業務を行う人を『清算人』と呼び、任意解散であれば原則としては社長が清算人となるのが通常だとは思いますが、先程申し上げた解散決議をする株主総会で別な人を選任することもできます。そして、その清算人が行わなければならない業務は大体次のようなものとなります。」
 

1.

債権申出の公告

2.

株主への解散通知

3.

解散及び清算人の登記申請

4.

解散時の「財産目録」及び「貸借対照表」の作成

5.

4で作成した書類について株主総会で承認を受ける

6.

裁判所へ4で作成した書類と「会社解散届」を提出

7.

管轄税務署へ「会社解散届」と「解散確定申告書」を提出

8.

清算中の決算報告書を作成

9.

8で作成した書類を株主総会で承認を受ける

10.

清算結了登記申請

11.

裁判所へ「書類保存者選任申請書」を提出

12.

管轄税務署へ「清算確定申告書」と「清算結了届」を提出
 
黒田
「大体こんなところだと思います。そして、もちろん8の清算中の決算報告書を作成するまでに、会社の財産及び負債を全て整理しなければなりません。」

社長
「なるほど、随分色々やらなければいけないんだね。ちなみに税金関係はどうなっているのかな。」

黒田
「はい、まず会社の方ですが、税務署に対して申告書を提出するときに、所得が生じていれば法人税や地方税はかかりますし、地方税の均等割もかかります。さらに消費税も通常どおりかかります。」

社長
「まず会社の方というと他にも税金がかかるということ?」
 


黒田
「そうです、最終的に残った財産を株主に分配すると申し上げましたが、その時に資本に相当する部分を超える分配がある場合は、その超えた部分は配当を受けたとみなされますので、株主の方に所得税が課されます。」
 
社長
「なるほど、やはりかなり面倒なことが色々とあるんだね。」

黒田
「確かに、法の下に存在する一つの人格が消滅するわけですから、それなりの手続きはありますね。ただ実務上手続き関係はそれぞれの専門家が行いますので、取引先との取引の引継ぎや債権債務の処理がスムーズに完了すれば、そんなに難しいものでもありませんし、実際社長のお知り合いの方のように、後継者がいらっしゃらなくて会社の解散を選択される方は少なくありませんよ。」

社長
「そうですか、いやありがとう。細かいことはともかく、少しは理解できたよ。まあウチは状況からいってその選択をする可能性は少ないと思うけど、経営者ならある程度のことは知っておいた方がいいかな、と思ってね。」

黒田
「そうですね、おっしゃるとおりだと思います。」