株式公開のメリット・デメリット
   
カテゴリ:法務
作成日:08/23/2005
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 先日、社長が株式公開のセミナーに出席してきました。その時の神田講師と話しています。
 

社長
「当社の将来の夢として株式公開を考えていきたいと思っているのですが、最近の事情を知りたくて、セミナーに参加しました。そもそも株式公開というのはどういうことですか。」

  
神田
「株式公開はIPO(Initial Public Offering)ともいいます。株式会社がオーナーなど少数の株主によって所有され、譲渡が制限されている状態から、不特定多数の株主によって所有され、株式市場において自由に売買が可能となる状態になることを株式公開といいます。」

社長
「公開の市場としてはどういう所があるのですか。」

神田
「公開市場は、ここ数年で急速に変化しまして、1999年のナスダック・ジャパンの創設以降、東京証券取引所にはマザーズ市場、大阪証券取引所にはヘラクレス(ナスダック・ジャパンの後継)市場、福岡証券取引所Qボード市場、名古屋証券取引所セントレックス市場、札幌証券取引所アンビシャス市場と相次いで創設され、ジャスダック(店頭市場)のみがベンチャー市場とされてきたそれまでとは一変しました。」

社長
「ところで、株式公開のメリットはなんでしょうか?」

神田
「いろいろありますが、整理すると、
 

1.

資金調達手段の多様化
株式公開により、公募による時価発行増資、社債、新株予約権付社債の発行などの直接金融の道が開かれます。
 

2.

知名度・信用度の向上
株式を公開できるということは、公開審査をパスしたということであり、社会的信用が飛躍的に向上します。また、日々の株価や決算情報、事業内容や経営方針などがマスメディアで取り上げられるため知名度もアップします。
 

3.

優秀な人材の確保
知名度と信用度が向上することにより、御社への就職希望者が増え、優秀な人材を確保できる確率が高くなります。
 

4.

役員・従業員の意欲向上
ストックオプション制度や従業員持株会を活用することによって社員の意欲をより一層アップさせることができます。
 

5.

経営管理体制の強化
公開準備の過程で、内部牽制組織や予算管理といった経営管理体制の強化が図られることになります。これにより、経営管理上の数値やデータ、その流れなどが容易に把握できるようになり、経営の機動性・迅速性も増します。
 

6.

創業者利潤の実現
オーナー経営者は株式公開時に自社株を市場で売り出すことにより、莫大なキャピタル・ゲインを得ることができます。」
 
社長
「それだけメリットがあるから、みんな必死になって公開を目指すわけですね。逆にデメリットはどういう点ですか。」

神田
「デメリットも次のようにいろいろあります。
 

1.

ディスクロージャーの義務
投資家保護の観点から、公開会社に対しては、投資判断のための資料として決算資料、有価証券報告書、半期報告書の提出が義務づけられており、その他にもタイムリーな企業内容の開示が要求されています。
 

2.

経営責任、社会的責任の増大
株式が一般投資家の間で取引されるようになると、経営者の経営責任や企業の社会的責任は飛躍的に増大します。経営者は、株式公開前には少数の特定の株主だけを意識していれば十分でしたが、株式公開後には不特定多数の株主のための経営を求められます。株価や配当について常に株主から監視されるだけでなく、社会的企業にふさわしいコーポレート・ガバナンスやコンプライアンスが求められます。
 

3.

株主対策、敵対的買収のリスク
自社の株式が投機的取引や、買い占め、敵対的買収の対象となる可能性があります。また、株主総会で悪質な株主が少数株主権を乱用する場合や、株主代表訴訟を受ける場合にも、注意を払っておく必要があります。
 

4.

事務量・事務コストの増大
公開準備段階での経営管理体制の整備、人材の確保、公開申請資料の作成に多大なコストが必要になります。また、上場時には、上場審査料、上場手数料、募集・売り出しに係る引受手数料なども発生します。ディスクロージャーに伴う経理事務、株式事務、株主総会の運営など、事務量が飛躍的に増加します。また、毎年、監査費用、上場管理料、有価証券報告書等の資料作成費用などが発生するようになります。」
 
社長
「こういうデメリットがあるから、有名企業でも公開しない場合があるということですか。特に最近は敵対的買収などいろいろ話題になりましたからね。」