契約の効力について
   
カテゴリ:法務
作成日:10/02/2001
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 印刷の機械を購入するという計画があって、その売買契約の取り交わしについて旭課長とリエちゃんが雑談をしています。ちょっと、聞き耳を立ててみましょうか。



リエ
「先日、税理士の伊豆野先生に、会社で固定資産などの大きな買い物をするときは、きちんと契約を取り交わして、領収書もちゃんともらっておくようにいわれました。契約書や領収書がないと、契約が無効になってしまうという意味だと思うんですが………。そうですよね、旭課長」


旭課長
「うーん、ちょっと正確ではないなあ。契約書や領収書がなくても、契約は立派に成立しているんだよ。契約は、売る方と買う方の意思のあり方によって決まるんだ。つまり、買主の「申し込み」の意思表示と売主の「承諾」の意思表示が一致すれば契約は有効に成立すると考えていい。つまり、契約書や領収書などの書面がなくても、契約にはいっこうに影響がない。これらの書面は、裁判上の証拠にすぎないと思っていいんだ。」


リエ
「えー、そんなお互いの思いだけで決まるほど、契約って簡単なものなんですか。」

旭課長
「うん、民法という法律では、契約は意思主義であって、お互いの意思の合意で成立することになっているんだ。もう少し説明すると、この機械をください、はい、いいですよ、といって話がまとまったとたんに、買う方は、機械の引き渡しを受ける債権と代金の支払いをする債務を負う。売る方は、機械を引き渡す債務を負い、代金の支払いを受ける債権を持つ。同時に、所有権も移ってしまうと考えるんだ。」

リエ
「えー、ただ約束しただけで、そんな話になっちゃうんですか。」

旭課長
「契約と約束との違いの判別は、難しいところがあるんだが、商取引では、単なる口約束では済まないだろうね。契約と約束との違いは、契約は、法律的に強制力を持つところにある。つまり、契約違反は裁判所が介入して強制的にその契約を実現させることができるところに約束との大きな違いがあるんだよ。」



リエ
「えー。昨日、彼に誕生日プレゼントに手編みのマフラーをあげると言っちゃった。これを破ったら、契約違反かな。」

旭課長
「ははは、大丈夫、民法という法律は、常識で考えていい。市民生活が円滑に行われるように、トラブルになったときに補充的に使われるんだ。彼との間で、トラブルがない限り心配はないよ。」

リエ
「うーん……??」