登記申請時の『株主リスト』添付の義務化
   
カテゴリ:法務
作成日:11/08/2016
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  



リエ
「黒田さん、経理の質問ではないんですけど、ちょっと聞いてもいいですか?」





黒田
「はい、リエちゃん。何でしょうか?」

リエ
「先日、登記事項証明書の交付請求で法務局に行ってきたんですけど、法務局内に『平成28年10月から株主総会決定事項の登記申請時に『株主リスト』が必要になります。』ってポスターが貼ってありました。登記申請の方法が変わったんですか?」

黒田
「近年、株主総会議事録等を偽造して役員になりすまして役員の変更登記をしたり、本人の承諾のない取締役の就任の登記申請を行った上で、会社の財産を処分するなど商業登記を悪用した犯罪や違法行為が増えていることから、商業登記規則が改正されました(平成28年4月20日法務省令第32号)。平成28年10月1日以降の登記申請に当たっては、株主総会議事録の他に添付書面として『株主リスト』を提出することが義務付けられました。この『株主リスト』を提供することにより、不実の株主総会議事録が作成されるなどして真実でない登記がされることの防止、登記の真実性の確保、法人の透明性の確保に役立つことになるとされています。」

リエ
「えっ!! 知らないところで勝手に役員変更登記申請が行われた………ということがあったんですか? 怖いですね~。ちなみに『株主リスト』の添付が必要になるのはどういう登記申請の場合ですか?」

黒田
「この『株主リスト』は、(1)登記すべき事項につき株主全員の同意(又は種類株主全員の同意)を要する場合、(2)登記すべき事項につき株主総会の決議(又は種類株主総会の決議)を要する場合、に添付が必要となります。役員の選任・解任、増資・減資、目的変更、組織再編など、株主リストを添付する必要のある申請は非常に多いと思います。ちなみに株主総会決議を省略する場合も株主リストの添付が必要となります。株式会社以外の投資法人や特定目的会社につきましては、社員のリストの提出が必要となります(その他の法人は不要)。」

リエ
「『株主リスト』はどういう内容を記載するんですか?」

黒田
「『株主リスト』は、(1)株主の氏名又は名称、(2)住所、(3)株式数(種類株式発行会社は種類株式の種類及び数)、(4)議決権数、(5)議決権割合(株主全員の同意を要する場合は不要)を記載します。登記すべき事項につき株主全員の同意を要する場合は、株主全員について記載します。登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合、(一)議決権数上位10名の株主、(二)議決権割合が3分の2に達するまでの株主、のいずれか少ない方の株主について記載します。そして、それらの記載内容の証明として、登記所届出印(代表印)を押印します。『株主リスト』の記載例が法務省のホームページ(※1)で公表されていますので、これを参考にしてください。」

リエ
「はい、わかりました。黒田さんは登記のことまで詳しく知っているんですね。すごいですね~。」

(※1)法務省のホームページ