収用等により土地建物を売った時の特例
   
カテゴリ:税務
作成日:09/01/2015
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  



旭課長
「黒田さん。ちょっと聞いてもいいですか。」






黒田
「はい。なんでしょう。」

旭課長
「個人事業を営んでいる私の友人なのですが、道路拡張に伴い事業所を売却して補償金をもらうことになったらしいのです。」



リエ
「公共事業のために所縁のある土地を手放さなければいけないのですか?」



黒田
「日本には土地収用制度があって、土地収用法という法律に基づいて事業認定された公共事業のためには、土地の所有者の意思に関わりなく収用できるようになっているのです。」

旭課長
「ええ。友人も早々に諦めて手放すことを決意したようです。そこで心配しているのが、補償金をもらうことで多額の税金を納付することになるのではないかと。」

リエ
「たしかに土地の譲渡になるので、先祖代々の土地などで取得価格が低いと譲渡所得は大きくなってしまいますね。」

黒田
「土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のために土地建物を売却した場合には課税の特例がありますよ。」

旭課長
「どういったものですか?」

黒田
「収用等により代替資産を購入し、売った金額より買い換えた金額のほうが多いときは課税が将来に繰り延べられ、売った年には譲渡がなかったものとされます。売った金額より買い換えた金額のほうが少ないときは、その差額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。この特例を受けるには次の要件がすべて必要になります。

(1)

売った土地建物が固定資産であること。(不動産業者などの販売目的で所有する土地建物は固定資産ではありません)

(2)

原則として、売った資産と同じ種類の資産を買い換えること。(例えば土地と土地、建物と建物など)

(3)

原則として、土地建物の収用等のあった日から2年以内に代わりの資産を取得すること。」

リエ
「それでは買い換えをしなければいけないのですか?」

黒田
「いいえ。譲渡所得から最高5000万円の特別控除を差し引く特例もあります。この特例を受けるには次の要件がすべて必要になります。

(1)

売った土地建物が固定資産であること。

(2)

その年に公共事業のために売った資産の全部につき、上記の代替資産を取得した場合の特例を受けていないこと。

(3)

買取り等の申し出があった日から6ヵ月を経過した日までに土地建物を売っていること。

(4)

公共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた者(その者の死亡に伴い相続又は遺贈により当該資産を取得した者を含む)が譲渡していること。
これら2つの特例のうち、どちらか一方の特例を受けることができます。」

旭課長
「そうですか。もう引退すると言っていたので5000万円特別控除の特例を使うと思います。補償金も5000万円まではないはずですから、納税はありませんね。」

黒田
「収用等による補償金には対価補償金、収益補償金、経費補償金など様々な名目があります。原則的に、この特例が適用されるのは売った資産の対価となる対価補償金だけですので、それ以外の名目の補償金については注意が必要ですよ。」

旭課長
「わかりました。ありがとうございます!」