免税事業者が事業用不動産を売却した際の消費税法上の注意点
   
カテゴリ:税務
作成日:07/12/2016
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  





田中社長
「黒田さん、こんにちは。お忙しいところ呼び出してしまって申し訳ない。少し相談したいことがあってね。」

黒田
「とんでもございません。リエさんから簡単には伺ってはいますが、改めてお聞きしてもよろしいでしょうか?」



田中社長
「私は住宅用マンションを2部屋賃貸しているのだけれど、消費税は納める必要がないと税務署から聞いていてね。そのことを税務署は何事業者と言ったかな。」





リエ
「住宅の貸付けは非課税取引ですから、基準期間における課税売上高が1000万円以下となり、免税事業者に該当しているということですね。」


田中社長
「そうそう。税務署もそう言っていたね。ただ、今年は1部屋売却したいのだけれど消費税はどうすれば良いのか分からなくてね。消費税を納める義務がない以上、相手方にも請求してはまずいような気がしているのだけれどどうだろう?」

黒田
「はい。社長のご心配もごもっともです。ただ免税事業者との取引であっても課税取引であれば消費税自体は発生しますし、買い手側が課税事業者であれば、社長へ支払った消費税を仕入税額控除として計算することになります。

 そのため免税事業者であっても、建物の売価に係る消費税を請求するのが一般的です。もちろん土地の売価部分については、非課税取引ですので消費税は請求することができませんが。」

田中社長
「なるほど。買い手から預かった消費税はそのまま私のものになってしまうということか。なんだか制度として問題があるような気がするなぁ。」

黒田
「仰る通りです。買い手が支払った消費税が国へ納付されず問題視する声が挙がっているのも事実です。いわゆる益税問題ですね。ただ、現行制度上は免税事業者が消費税を請求することに問題はありませんのでご安心ください。」 

田中社長
「ありがとう。ほかに何か注意する点はあるかな?」

黒田
「今回建物を売却されることにより、今年の課税売上高は1000万円を超えることになろうかと思います。そのため、翌々年の事業年度は基準期間における課税売上高が1000万円を超えることになりますので、課税事業者となることに注意が必要です。今年の課税売上が確定して、来年の3月に確定申告を行うときに、消費税課税事業者届出書を申告書と一緒に提出されたほうがいいでしょう。」

リエ
「事業用建物の売却は、課税売上高となりますもんね。しっかり覚えておかないとうっかり忘れてしまいそうですね。」

田中社長
「黒田さん、ありがとう。とても助かったよ。今後も宜しく頼むよ。」

黒田
「はい。もちろんです。何なりと仰って下さい。」