医療費控除で特例が創設された!?
   
カテゴリ:税務
作成日:01/27/2016
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  





リエ
「黒田さん、この間の平成28年度税制改正大綱で医療費控除の特例が設けられたというのは本当なんですか。」

黒田
「あぁ、セルフメディケーション(自主服薬)推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)の創設のお話ですね。本当ですよ。現行の医療費控除を補完する新しい所得控除制度になります。」



リエ
「そうなんですね。ところでセルフメディケーションって何ですか。」

黒田
「セルフメディケーションというのは、自分自身の健康に責任を持ち、軽微な身体の不調は自分で手当てをするという考え方のことです。年々増える医療需要の抑制や、自己の体調管理の下、さらなる健康社会を目指そうとするものですね。」

リエ
「そういう意味ですね。医療費増加の話題はニュースや新聞でも時々出ていますよね。あと、そのスイッチOTC薬というのは何ですか。」

黒田
「スイッチOTC医薬品は、医療用から一般用に転用された医薬品(処方箋がいらない)で、薬局やドラッグストアなどで薬剤師さんなどに適切なアドバイスを受け自己の責任、判断で購入するお薬のことです。簡単に言えば、市販薬だね。専門的にはもう少し分類があるみたいですけど。」

リエ
「そうなんですね~。OTC医薬品なんて初めて聞きましたけど、普段、薬局で買っている市販の風邪薬などのことなんですね。」

黒田
「はい。ただ、全ての医薬品が対象ということではないので注意は必要です。」

リエ
「なるほど~。それで、この新設される制度の具体的な内容はどうなっているんですか。」

黒田
「では、簡単に説明しますね。健康の維持増進及び疾病予防への取組みとして一定の取組み(※1)を行う個人が、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る一定のスイッチOTC医薬品を購入した場合に、次の計算で求めた金額をその年の総所得金額等から控除することができます。」

【控除金額】=(控除対象医薬品の合計額)-
               (保険金などで補てんされる金額)-1万2000円
 ※控除限度額 8万8000円


(※1)一定の取組み:1)特定健康診査、2)予防接種、3)定期健康診断、4)健康診査、5)がん検診の受診

リエ
「へぇ~、上限はあるけれど、現行の医療費控除みたいに医療費が10万円以上(その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額以上)の支払いが必要という下限の制約がないので、新制度での医療費控除を受けられる方が増えますね。」

黒田
「そうですね。今まで医療費が10万円以上の要件等に該当せず医療費控除が受けられないという方も多かったと思いますから、新制度の適用で医療費の負担が軽くなる人が増えるかも知れませんね。」

リエ
「それは助かりますね。ところで、現行の医療費控除の適用要件も満たしていれば、新制度分と併せて医療費控除を受けることはできるんですか。」

黒田
「いいえ、それはダメですね。どちらか一方の選択適用となりますので、両制度の要件を満たすのであれば、有利な方を適用しましょう。」


「はい、わかりました。」

黒田
「今日は新しい制度についてお話をしましたが、身体の自己管理は大切ですが、必要なときにはきちんと医療機関に診てもらいましょうね。」

リエ
「はい、わかりました。無理は禁物ですよね!」