「期限前弁済手数料」は譲渡費用に当たるか
   
カテゴリ:税務
作成日:08/11/2015
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  





黒田
「亀井工場長お久しぶりです。」

 
亀井工場長
「監査はもう終わったのですか。」



黒田
「はい、今監査報告を終わらせたところです。」

亀井工場長
「そうですか。では黒田さんに質問をしても構いませんか。」

黒田
「どんなことですか。」

亀井工場長
「私が所有していた、アパートの建物とその敷地を譲渡することが決まりましてね。
譲渡するに当たって、アパートの建物の建設資金を借入した銀行に期限前弁済をした際、銀行との金銭消費貸借契約の約定により、その借入金の期限前弁済に伴う期限前弁済手数料を支払いました。その期限前弁済手数料は、譲渡所得の計算上、譲渡費用として扱われるのでしょうか。」

黒田
「期限前弁済手数料は、金銭消費貸借契約で弁済期限を債権者と債務者双方で約定締結した場合において、債務者が期限前弁済を行ったことにより、債権者が約定による期限まで貸し付けることにより得られたであろう利益の補填と考えられますので、その補填するために支払う一定額の金銭については、一種の損害賠償金に該当するものと思われます。したがいまして、譲渡所得の計算上、亀井工場長が銀行に支払った期限前弁済手数料は、客観的にみてアパートの建物の譲渡を実現するための譲渡費用に当たらないと考えられます。」

亀井工場長
「譲渡費用に該当するものと思っていました。」

黒田
「譲渡費用とは、一般的に、譲渡を実現するために直接必要な支出を意味します。今回の期限前弁済は譲渡を実現するために必ずしも必要な行為ではないと考えられるため、残念ながら譲渡費用には該当しません。しかし、建物の譲渡に関連し、銀行に支払った期限前弁済手数料はその債務が確定したときの不動産所得の必要経費にすることはできると考えられます。」

亀井工場長
「よく分かりました。期限前弁済手数料は、譲渡する際の直接費用に該当しないと言うことですね。」

黒田
「はい、おっしゃるとおりになります。」




リエ
「黒田さん、譲渡費用の範囲にはどのようなものが該当するのですか。」

黒田
「簡単に説明しますと、
(1)土地や建物を売るために支払った仲介手数料。
(2)印紙税で売主が負担したもの。
(3)貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうとき支払う立退料。
(4)土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額。
(5)既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で売るために支払った違約金。
これは、土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金のことです 
(6)借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など。
そして、先程も言いましたが、譲渡費用に当たるかどうかは、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的にみてその譲渡を実現するためにその費用が必要であったかどうかによって判断します。」

亀井工場長
「黒田さん、今日は有難うございました。勉強になりました。」